初めて味わう大きな挫折
11月10日に幕を開けた侍ジャパンの強化試合。いよいよ来春に迫ったWBCへ向けての試金石となる4試合だが、中には個人としても結果・内容を求められる選手がいる。
たとえば、阪神から唯一の選出となった藤浪晋太郎がその一人。正直なところ、メンバー発表で藤浪の名前が呼ばれた際には「なぜ...?」という声も多数挙がった。
それは仕方がないことかもしれない。今シーズンは26試合の登板で7勝11敗と4つの負け越し。高卒1年目から続けていた連続2ケタ勝利の記録に、ついに終止符が打たれた。
とにかく立ち上がりが悪く、26度の先発のうち11度は初回に失点。チームメイトのメッセンジャーは28戦で8度、岩貞祐太は25戦で3度だったことを見ても、藤浪の苦労ぶりがお分かりいただけるだろう。
無駄なボールが多く、甘く入ったボールを痛打される――。そんな悪循環を繰り返していた。
真価が問われる“追試”
それでも、やられっぱなしでシーズンを終えたわけではない。
9月22日の広島戦では、9回・137球の熱投でリーグ最強打線を相手に1失点完投勝利。今季最終登板となった9月30日の巨人戦も、白星こそつかなかったものの6回を無失点と好投を見せた。
そしてこの2試合が、“追試”につながる。11月の強化試合に臨む侍ジャパンの代表メンバーに選出されたのだ。
メンバー発表の会見で藤浪について聞かれた小久保監督は、「最後の2試合の登板を見て決めた」と選出理由について回答。「あの姿であれば十分に通用するのではないかと。あとはピッチングコーチの強い推薦もあったので」と語った。
無駄な失点が命取りとなる国際大会において、不用意な四球や失策はすべてが命取りになる。また、この強化試合では設けられていないものの、国際大会では球数制限もある。藤浪が最大の課題としている部分だ。
順調にキャリアを積んでいた右腕が、初めてつまづいた2016年。終わりに差しかかった11月に、大きな注目を浴びる中で訪れた“試練の場”。課題を克服し、「本来の力」を発揮できるのか。それを誰よりも願い、舞っているのが小久保監督であり権藤コーチであろう。
強化試合も残り2試合。虎の若きエースの投球に注目だ。
▼ 藤浪晋太郎
生年月日:1994年4月12日(22歳)
身長/体重:197センチ/89キロ
投打:右投右打
ポジション:投手
経歴:大阪桐蔭高-阪神(12年D1)
[今季成績] 26試(169回) 7勝11敗 与四死78 奪三振176 防3.25
[通算成績] 103試(668回2/3) 42勝32敗 与四死292 奪三振695 防2.96