約1カ月の離脱から復帰も...
「1カ月間待っていてくれた方々に申し訳ない気持ちです」――。
試合後、左腕は謝罪のことばを口にした。
7月24日の巨人戦に先発した今永昇太。6月18日の楽天戦で敗れ、以降二軍調整を続けてきたドラ1ルーキーがハマスタのマウンドに帰ってきた。
初回こそ三者凡退で斬る好スタートを見せるも、4回に村田、ギャレット、小林と1イニングに3発の被弾。この回一挙6点を失うと、5回にもギャレットに適時打を浴び、5回7失点で敗戦投手となった。
快進撃を支えた5月の快投
それでも、前半戦の健闘を支えたのは、この今永をはじめとする先発陣のがんばりに他ならない。
開幕直後に大きくつまずいたDeNA。3・4月を9勝18敗2分と負け越し、5月3日時点での借金は今季最大の11にまで膨らんでいた。ところが、そこから5月28日までの1カ月足らずで借金を完済する快進撃を披露。今現在も44勝46敗3分の借金2で上位に食らいつき、CS進出圏の3位につけている。
上述の通り、チームの急浮上を支えたのは間違いなく投手陣。5月のチーム防御率は2.70で、2位・中日の3.51を大きく離す断トツの数字を記録した。
中でも今永は、プロ初勝利まで1カ月以上を要したものの、プロ初勝利を挙げた5月6日の広島戦から負けなしの4連勝。5月は26回と2/3を投げて喫した失点はわずかに3(自責は2)。防御率は0.68という驚異的な数字でチームを支えた。
同じく無傷の4勝で防御率0.33だったチームの先輩・石田健大に月間MVPは譲ったものの、それに匹敵する成績。奮闘したルーキーは首脳陣やファンからの信頼を勝ち取った。
チームメートを鼓舞する強気の投球スタイル
ところが、6月に入ると、6月4日のロッテ戦で3回5失点のKO。6月11日のオリックス戦では5勝目こそ挙げたものの、18日の楽天戦で敗れた後に登録抹消となった。
疲労を考慮されての抹消だったが、今永以外の投手陣にも疲労の色は見て取れる。チーム防御率を見ると6月が3.90、7月はここまで5.03と大きく悪化。チームも6月以降は19勝21敗と、投手陣の不調と比例するように停滞気味だ。
広島が独走している以外は混戦模様のセ・リーグ。2位、3位の順位を巡っては、これからが本番だ。
Aクラスに入れば、2005年以来で11年ぶり。球団初のCS進出、そしてさらに上位を狙うには、疲労の影響が出はじめる夏場以降に、投手陣がいかに踏ん張れるか、というところがひとつの鍵となる。
これから正念場を迎えるチームにとって、リフレッシュを経て戻ってきた今永は起爆剤となり得るだろう。
ルーキーながら、ひとたびマウンドに立てば内角をえぐる強気の投球で打者を封じるスタイル。眼光鋭く打者と対峙し、気持ちを込めて投げ込む姿は、勝負どころでチームメートを鼓舞するに違いない。
球の勢いや技術だけでなく、“気持ち”で投げる――。そんな男がマウンドで躍動すれば、チームの勢いはさらに加速していくはずだ。
DeNAの命運を握るルーキー左腕から目が離せない。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)