若手の台頭の中で示す存在感
ケガのため育成契約だったが、今季の開幕直後に支配下に復帰すると目覚ましい活躍を見せ、オールスターゲームにまで出場した原口文仁。東京六大学の通算安打記録をひっさげ、開幕から外野の一角を担っている高山俊。二塁手や三塁手としてスタメンに定着しつつある北條史也...。
そのほかにも、俊足を武器に開幕スタメンを勝ち取った横田慎太郎や、将来の主軸候補・陽川尚将、新人の板山祐太郎など、今季の阪神では金本知憲監督が掲げる「超変革」の下で、多くの若手野手が台頭している。
しかし、チームの成績はというと、ここまで38勝52敗3分の借金14。クライマックスシリーズ進出圏内の3位まで6ゲーム差の最下位と、苦しい戦いがつづく。
特にチーム打率はリーグワーストの.240、得点も298でリーグ5位と攻撃力の不足が深刻。ここが低迷の大きな理由となっているが、その中でひとり気を吐いている男がいる。
6月25日の広島戦では日米通算2000安打を達成し、現在リーグ7位の打率.314を記録しているベテラン・福留孝介だ。
打率3割を記録すれば10年ぶり
メジャーリーグから日本に復帰した2013年は、ケガの影響もあり63試合の出場で打率.198と期待を大きく裏切った。それでも、2014年には打率.253、昨季は打率.281と徐々に成績を上げてきた。
ちなみに、今季このまま打率3割をキープすれば、打率.351で首位打者に輝いた中日時代の2006年以来で10年ぶりのことになる。
昨季の20本塁打から、今季は4本塁打と一発こそ減っているものの、リーグ3位タイの20二塁打を記録するなど、鋭い当たりで外野の間を抜く福留らしいバッティングは健在だ。
福留を脅かすような若手は出てくるのか...
チームの要・鳥谷敬が極度の不振に陥り、チームで唯一の2ケタ本塁打を記録しているマウロ・ゴメスも打率.250と本来の調子からは程遠い。そんな中で、福留の存在感は際立っている。
振り返ってみると、2012年のオフに阪神が福留を獲得した際には批判的な声が多かった。
FAなどの補強に走ることが多く、若手の育成にも目を向けるべきだという批判が主だったが、若手の野手が出てきつつあるシーズンに福留がチームを支えているというのはなんとも皮肉だ。もし今季、福留がいなかったら...。こう考えるとゾッとするファンも多いだろう。
ただし、年齢を思えば、福留がこの先何年もいまのような状態でプレーできないのも事実だ。福留が元気にプレーできるうちに、福留を脅かすような若手が出てきてこそ「超変革」なのである。多くの若手が一軍でプレーする機会を得ているが、現状ではポジションを与えられているに過ぎない。
外野手では、前述の高山や横田、板山以外にも、江越大賀、伊藤隼太、中谷将大と有望株が多くいる。そのなかから誰が福留とポジションを争うことになるか。
福留の背中をとらえ、追い抜く選手は誰なのか――。福留の意地とともに見守りたい。
文=京都純典(みやこ・すみのり)