藤浪の“懲罰続投”に批判が殺到
阪神の金本知憲監督の“迷”采配が、大きな波紋を呼んでいる。
現役時代は“鉄人”の異名で知られ、コーチ経験がないまま人気球団・阪神タイガースの監督に就任。「超改革」をスローガンに、開幕前からその動向は選手以上に注目を浴びてきた。
野手に関しては、開幕から若手を積極的に起用するなど、そのビジョンが伝わっているが、こと投手陣の扱いに関しては当初から手厳しい意見も多かった。それが8日の「藤浪、8回161球8失点」「懲罰続投指令」が決定打となり、球界の内外から厳しい声が噴出している。
日米で物議をかもした「田中の連投」
2013年の日本シリーズを覚えているだろうか…。楽天と巨人の間で行われたあのシリーズだ。
楽天のエース・田中将大(現ヤンキース)は、第6戦で160球の熱投。誰もが田中のシリーズは終わったと思っていたが、エースは翌日行われた第7戦の最終回にまさかの登板。最終的には胴上げ投手となり、チームに創設初の日本一をもたらした。
ところがその翌年、活躍の場をアメリカに移した田中の右ひじは早くも悲鳴をあげる。すると、“あの連投”のことが日米で大きな議論となった。
しかし、今回の「藤浪の161球」と田中では事情が大きく異なる。
田中の場合はチームの日本一が懸かっており、当時の星野監督にとっても苦渋の決断だったはず。一方、今回の藤浪に関しては、立ち上がりのふがいなさから「最後まで投げさせるつもりだった」と、金本監督も続投がいわゆる“懲罰”であったことを認めている。
金本監督が背負う“十字架”
それは指揮官の藤浪に対する信頼の裏返しだと思いたいが、残念ながら阪神首脳陣以外の誰の目にもそれは“パワハラ”にしか映らないのが現実のようだ。
プロ野球でも時折、気に抜いたプレーが見られた際には“懲罰”として早いイニングに交代させられる場合もある。しかし、それはあくまでも選手のやる気が明らかに欠如していたり、イージーミスを繰り返したりした時だ。今回の藤浪はそれには当てはまらないだろう。
今回の続投指令を意気に感じた藤浪が、心を入れ替えて後半戦に躍進を...という可能性もある。しかし、残り十数年はあろうプロ野球生活。彼の肩、肘に痛いところが出るたびに、この「161球事件」が思い出されるのは間違いない。金本監督は、重い重い十字架を背負うことになった。
また、今回は投手陣を守る立場でもある投手コーチも、藤浪に苦言を呈しているという。苦戦が続く阪神だが、その内情は我々が思っている以上に瀕死寸前なのかもしれない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)