“らしくない”投球が目立つ今季の藤浪
7月3日、敵地での中日戦に3-8で完敗し、ついに単独最下位に転落した阪神。昨季同様に得点力不足に悩まされている打線もさることながら、今季の阪神はメッセンジャーに藤浪晋太郎、能見篤史、岩貞祐太がそろって防御率3点台という先発の軸のふがいなさも目を引く。
先発4人のうち、貯金ができているのは7勝5敗のメッセンジャーただひとり。これでは、チームの借金8という数字にもうなずける。なかでも気になるのが、“らしくない”投球が続く若きエース・藤浪だ。
先発した直近の試合はというと、7月1日の中日戦。4回まではひとりの走者も許さないパーフェクトピッチングを披露し、久しぶりに“手がつけられない”ときの藤浪が見られるかと思った。ところが、同点で迎えた6回に突如乱れる。
自らの失策で無死一塁とすると、大島洋平、平田良介と立て続けに直球を打たれ、先制を許してしまう。さらに主砲・ビシエドには変化球をレフトスタンドまで運ばれ、この回一挙4失点。逆転負けで4敗目を喫した。
これで6月2日の楽天戦を最後に勝ちなし。開幕3連勝で蓄えた自身の貯金もなくなってしまった。
同点・リード時の得点圏被打率が大きく悪化
今季の藤浪に目立つのが、この日のような“勝負どころでのもろさ”だ。
今季の被打率は.235にもかかわらず、得点圏に走者を背負ったときの被打率は.280。特に、同点かチームがリードしている場合の得点圏被打率は.344にまで跳ね上がっている。
事あるごとに比較されてきた大谷翔平(日本ハム)の数字を見ると、同点・リード時の得点圏打率は.195を記録。
7月3日のソフトバンク戦では、2日前の藤浪とは対照的に4回まで毎回得点圏に走者を進められながらも、得点は許さない。その後は尻上がりに調子を上げ、5回以降は無安打投球。最終的には8回無失点で自身7連勝を飾った。
昨季の藤浪といえば、同点・リード時の得点圏被打率が.165を叩き出すなど、今季の大谷をもしのぐ無類の勝負強さを誇っていた。まさにギアを上げることができていたのだ。
ところが今季は、チームを勝利に導くべき重要な場面で明らかに踏ん張れなくなっている。それが数字以上のふがいなさを感じさせる一因となっているのかもしれない。
「超変革」を掲げるチームは、世代交代の途上にある。今後の阪神投手陣を引っ張るのは、間違いなく藤浪だ。そのエースに“らしくない”投球が続くようでは、チームの浮上は望めない。
幸いなことに、セ・リーグは広島が独走しているほかは完全な団子状態だ。最下位転落とはいえ、諦めるのはまだ早い。
ちなみに、昨季の藤浪は7月以降で8勝3敗と夏場に強さを発揮。チームの4年連続Aクラス死守は、“夏男”の右肩にかかっている。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)