阪神苦戦の大きな要因
7月3日の中日戦に敗れ、セ・リーグ最下位に転落した阪神。苦戦の要因はいくつかあるが、大きな誤算だったのは“勝利の方程式”の崩壊であろう。
昨年までは、2年連続で最優秀中継ぎ投手に輝いた福原忍から2年連続セーブ王の呉昇桓へ繋ぐという勝利への道があった阪神。ところが、今季は福原が不調により春先で二軍降格。呉昇桓はメジャーへと渡ってしまい、勝ちパターンを完全に失ってしまった。
開幕当初は新助っ人のマルコス・マテオをストッパーに据えるも、これが失敗。緊急事態にそれまで先発をしていた藤川球児を最後に持ってくるもこれもハマらず。今はもうひとりの新助っ人ラファエル・ドリスがその役目を担っている。
引き金となったのは昨オフの“事件”。阪神は呉昇桓との2年契約が終わり、新たに再契約を結ぶ方針であったのだが、そんな中で衝撃的なニュースが飛び込んでくる。呉昇桓がマカオで違法賭博をしていた容疑が持ち上がったというのだ。
韓国・ソウル地方検察庁からの調査を受け、結果的には賭博の常習性や暴力団組織の関与が確認できなかったことから、年末に略式起訴という扱いになったのだが、阪神は12月11日に残留交渉を打ち切った。その裏にあったのは、「疑わしい選手を置いてはおけない」という伝統球団のプライドと決意にほかならない。
「前所属:阪神タイガース」を背負って
一方、阪神を退団することになった呉昇桓は、年明けにナ・リーグの強豪セントルイス・カージナルスと契約。現地時間4月3日の開幕戦でいきなりのメジャーデビューを果たす。
以降は4月10日のブレーブス戦でメジャー初勝利を挙げるなど、デビューから7戦連続の無失点投球で評価を上げていく。
すると、当初は「リリーフのひとり」だったのが、守護神のトレバー・ローゼンタールへと繋ぐ「セットアッパー」へと格上げ。その後も安定した投球を見せ続けた右腕は、ローゼンタールの不調を受けてついにメジャーでも抑えを任されるようになった。
現地7月2日のブリュワーズ戦でメジャー初セーブを挙げると、3日の試合でも連投でセーブを記録。ここまで41試合の登板で2勝0敗、2セーブ。防御率1.71という好成績でチームを支えている。
「前所属:阪神タイガース」の肩書きを背負い、メジャーの舞台で奮闘する右腕。韓国、日本で実績を残した守護神の新たな戦いから目が離せない。