若き2人のスラッガーによる熾烈な争い
「神ってる」から「筒GO」へ――。
週末のスポーツ新聞各紙には、『ポケモンGO』とかけたそんな見出しが並んだ。
史上初となる3戦連続の1試合2本塁打を記録したDeNAの若き4番バッター・筒香嘉智。7月だけで12本塁打を放ち、ホームランダービーを独走していた山田哲人(ヤクルト)にわずか1本差と迫っている。
24日現在の両者の打撃成績は以下の通りだ。
・山田哲人(ヤクルト)
打率.348(リーグ1位) 本塁打29(同1位) 打点74(同1位) OPS1.149(同1位)
・筒香嘉智
打率.326(リーグ3位) 本塁打28(同2位) 打点66(同3位) OPS1.112(同2位)
山田は史上最年少の三冠王へとひた走り、23盗塁&出塁率.462もリーグトップ。対する筒香は、得点圏打率.371と勝負強い4番バッターとしてチームを牽引している。
同世代で切磋琢磨
92年7月生まれの山田は10年のドラフト1位、91年11月生まれの筒香は09年・ドラフト1位だ。ともに高卒のドラ1野手で、現在24歳という2人。2016年、同年代のスラッガーが球界を席巻している。
プロ野球の同時代のヒーローと言えば、あの“ONコンビ”もV9時代に長年に渡りセ・リーグ打撃タイトルを2人で分け合ったが、36年2月生まれの長嶋茂雄と40年5月生まれの王貞治では5学年違う。六大学のスター・長嶋と甲子園のスター・王というイメージもあり、プロ入り後も長嶋が兄貴分的な立ち位置だった。
75年からは長嶋監督と4番・王という体制で6シーズン戦い、77年には37歳の王が50本塁打を放って長嶋巨人V2の原動力となった。この頃、王とクリーンナップを組んでいたのは40年6月生まれの張本勲だ。当時30代後半のOH砲がチームを引っ張る姿は、現代の巨人の阿部慎之助と村田修一の姿と重なる。
85年と86年には、セ・パ両リーグで2年連続三冠王が誕生。セは54年3月生まれのバース、パは53年12月生まれの落合博満。日本的に言えば同級生の彼らは、30歳を過ぎた脂の乗り切った時期に圧倒的な数字で打撃タイトルを独占してみせた。
この活躍で落合は球界初の1億円プレイヤーへと成り上がり、バースが86年に残した打率.389はいまだにプロ野球記録である。
そして、90年代中盤から00年代にかけてはイチローと松井秀喜の時代である。イチローが73年10月生まれ、松井は74年6月生まれの1学年違い。高校時代には対戦した練習試合後、風呂場で一緒になったこともあったという。
ともに日本球界を代表するスター選手として切磋琢磨し、あらゆるタイトルを総なめにして、イチローはプロ9年目のシーズン終了後にポスティングシステムでメジャー挑戦。ゴジラ松井もプロ10年目のオフに海外FA権を行使してヤンキースへと移籍した。
現在、山田はプロ6年目、筒香は7年目を迎えている。このまま成長を続けたら、そう遠くない未来にメジャー移籍も現実味を帯びてくるはずだ。だからこそ、野球ファンとしては今の内に日本の球場でこの2人の勇姿を目に焼き付けておきたい。
何年かあとに球界の出来事を振り返った時、2016年シーズンは「山田・筒香時代」の始まりの年と言われることだろう。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)