22本塁打のうちビジターではわずか4本塁打
7月16日、全セの4番・筒香嘉智(DeNA)が、オールスターゲームで持ち前の長打力を見せつけた。先頭打者で巡ってきた2回の第1打席。マウンドに立つのは母校・横浜高の5年先輩である涌井秀章(ロッテ)だ。その初球を一閃。これぞ弾丸ライナーという強烈な打球は、あっという間に右翼スタンドに突き刺さった。
MVPに輝いた前日に続く連夜のアーチ。8年ぶりにオールスターゲームが開催された横浜スタジアムのファンを沸かせ、「本拠地で打てたのが一番うれしい」とコメントを残した。
今季の筒香はとにかくホームに強い。自身最多となる昨季の24本に並ぶ本塁打数を放つ筒香だが、そのうち、実に20本が横浜スタジアムで記録したもの。神宮で行われた19日のヤクルト戦で、1試合2本塁打を記録したものの、ビジターではわずか4本塁打しか打てていない。
この“内弁慶”ぶりは、本塁打だけでなく、その他の記録にもはっきり表れている。ホームでは44試合で打率.348、45打点と大暴れしている一方、ビジターでは36試合で打率.273、15打点と物足りない数字だ。
投手に疲労が表れる夏場以降、打線が勝敗を左右する
もちろん、戦い慣れた本拠地で強いということは、多かれ少なかれほかの選手にも当てはまること。たとえば、本打王争いで頭ひとつ抜けている山田哲人(ヤクルト)の打率も、ホームで.413、ビジターで.293と大きな開きがある。ところが、山田の本塁打数は、46試合のホームで16本、43試合のビジターで13本と、ほとんど差がない。打率についても、ただホームで打ち過ぎているだけ、という見方もできる。
ホームでの試合を落としたくないチームにとってもファンにとっても、横浜スタジアムで強い筒香は頼もしくも映るだろう。ただ、「もう少しビジターでも打ってほしい」と願いたくなるのが、周囲の本音かもしれない。
今季のDeNAは、開幕直後の3、4月に9勝18敗2分と大きくつまずいた。セ・リーグの借金を独占していた状態から盛り返し、2年連続、Aクラスで前半戦を折り返すに至らせたのは、投手陣の踏ん張りによるところが大きかったはずだ。
だが、夏場には投手陣に疲れが見えはじめる。DeNA投手陣には、少々早くその症状が表れており、5月のチーム防御率は2.70だったが、6月は防御率3.90、7月はここまで5.13と悪化。球宴直前の数カードでは二ケタ失点を喫するケースも目立ちはじめている。
ただ、他球団の投手陣にも、遅かれ早かれシーズンの疲れは必ず出てくる。打ち砕くのか、打ち込まれるのか……勝敗の行方を打線が決するゲームが増えるはずだ。主砲が“内弁慶”を克服し、ビジターのゲームにひとつでも多く勝利できるか。悲願のCS初進出を目指すDeNAと筒香が勝負の夏を迎える。
※数字は2016年7月19日終了時点
文=清家茂樹(せいけ・しげき)