6年ぶり、球団史上3度目のワールドシリーズ(WS)進出を決めたレイズ。初の世界一を狙うチームには、今季ひときわ目を引く変化があった。
俊足のチャンドラー・シンプソンを5番にも据える大胆な打順に、積極的なバント攻撃。これまでの常識にとらわれない野球が話題を呼んだが、実は投手陣でも「もう一つの革命」が進んでいた。
その正体は、チェンジアップだ。
MLB公式データサイト『Baseball Savant』によると、レイズ投手陣の同球種の割合は2024年が8.2%、昨季が11.7%。それが今季は20.4%まで跳ね上がり、メジャー30球団でトップとなった。2位パドレスの16.2%を4ポイント以上も上回っている。
しかも、ただチェンジアップを多投しただけではなく、結果も伴っていた。
チェンジアップの被OPSは2024年の.588から昨季は.548、今季は.510と改善。今季の.510はメジャーで2番目に低い数字だった。
では、なぜこれほどチェンジアップが増えたのか。
背景には、投手陣の顔ぶれの変化に加え、既存投手の配球変更がある。
象徴的なのが、先発のドリュー・ラスムセンだ。
昨季はフォーシーム、カットボール、シンカーの速球系3球種が全投球の約9割を占め、チェンジアップの割合はわずか1.2%だった。ところが今季は新たに「キックチェンジ」を導入し、その割合を13.3%まで引き上げた。
さらにポストシーズン(PS)では23.3%に上昇。同球種の被OPSは.250という数字を残した。昨季まで脇役だった球種が、今や欠かせない武器となっている。
救援陣には、もっと極端な右腕がいる。ブライアン・ベーカーだ。
PSで投じた83球のうち、チェンジアップは実に47球。投球割合は56.6%と半分を超え、それでいて被OPSはわずか.182。相手打者もチェンジアップを警戒しているはずだが、それでも攻略できていない。
こうした傾向はチーム全体にも表れている。
レイズ投手陣全体のPSにおけるチェンジアップ投球割合は26.3%で、出場した12球団中1位。2位フィリーズの16.1%を大きく引き離した。短期決戦でもチェンジアップへの傾斜を一段と強めたが、被OPSはレギュラーシーズンの.510から.453へと改善した。
ただし、WSの相手は手ごわい。
ブルワーズ打線は今季、チェンジアップに対する打撃の貢献度を示すRun Valueが+12でメジャー3位。ジャクソン・チョーリオは同球種に打率.310、長打率.552を記録している。PSでもチームの対チェンジアップOPSは.652と、レギュラーシーズンの.648からほぼ変わっていない。
奇抜な攻撃の陰で進んだ、レイズのチェンジアップ革命。初の世界一を懸けて、その武器が最も厳しい舞台で試されることになる。
文=八木遊(やぎ・ゆう)