3戦5本塁打8打点で前半戦締め 速球に振り負けない今季の筒香
眠れるハマの大砲がついに覚醒した。
7月14〜16日の広島戦で、筒香嘉智(DeNA)が持ち前の長打力を見せつけた。3試合で計5本塁打8打点の大爆発である。
その予兆は今季の早くから見て取れた。4月20日の広島戦で放った先制本塁打は、前田健太の149キロ直球に振り負けることなくライトスタンドへ運ぶ完璧な当たり。
かねてより筒香の課題として挙げられていたのが速球に対する打撃だ。それを、直球の平均球速でリーグ最速を誇る鯉のエースを打ち砕くことで払拭してみせた。今年の筒香は違う——―そう感じさせる1本であった。
もちろん、変化球への対応力はさすがの一言。前半最終戦となる7月16日の広島戦では、戸田隆矢のカーブをフルスイング。一時同点とする豪快な3ランとなった。この試合で2打席連続アーチを放った筒香。完全に量産体制に入り、オールスター休暇を挟むのがもったいなく思えたほどだ。
カモの中日とヤクルトをたたく 筒香のバットが上位進出のキー
そもそも、これまで周囲の期待に応えられていなかったのが不思議なくらいの逸材である。名伯楽として知られる横浜高校野球部コーチ・小倉清一郎氏をして「過去60年間トップの野手」と言わしめたほどだ。
それが、プロ入りしてからは苦難の連続。度重なるケガにスランプ……昨季はトニ・ブランコの加入により出場機会が激減。出場わずか23試合、1本塁打3打点というふがいない結果に終わった。さらに秋季キャンプのメンバーからは外され、アーロム・バルディリスの加入で外野手にコンバート。
危機感を持って臨んだ5年目は、すでに本塁打と打点でキャリアハイを更新し、打率も3割目前。勝利に飢えているDeNAファンの心を浮き立たせる活躍をようやく見せることができている。
それと比例するようにDeNAファンも活気づいている。ここまで本拠・横浜スタジアム開催の34試合での観客動員数は昨年比12.3%増。もちろん、球団の営業努力やキューバの至宝、ユリエスキ・グリエルの加入の影響もあるが、生え抜きの若き大砲の覚醒と無関係ではないだろう。
人気回復の兆しが見えるチームに必要なのは勝利だけとの声もある。しかし、実は今季のDeNA、5月以降は28勝26敗1分と勝ち越しているのだ。3、4月に作った11個の借金が重くのしかかるのが実情だが、まず目指すところはCS出場圏内の目安となる勝率5割。
DeNAの後半戦は中日、ヤクルトとのカードでスタートする。ともにBクラスで苦戦している2チームだけに、Aクラス浮上を狙うならしっかりたたいておきたい相手。そして、この2チームをカモにしているのが筒香なのだ。球団別対戦打率では、1位が対中日の.400、2位が対ヤクルトの.395。前半戦を豪快に締めくくった筒香が、後半戦の幕開けもド派手に飾るはずだ。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)