ここ数年は低迷
「ここ数年活躍ができていない中で、完封できたことは僕にとって収穫」
ロッテの唐川侑己が8月11日の楽天戦で、2011年6月28日の日本ハム戦以来、5年ぶりに完封勝利を挙げた。5年前に完封勝利を記録した11年は、自身初となる二ケタ12勝をマーク。近い将来、ロッテの“エース”として活躍することをファンは期待していた。
しかし12年以降は、8勝、9勝、4勝、5勝と苦戦。12年以前は、伸びのあるストレートで打者を封じていたが、近年は130キロ台前半のストレートを痛打される場面が多く見られた。それは数字にも顕著に表れ、昨季のストレートの被打率は.330(115-38)。防御率もプロ入り後、自己ワーストとなる6.32でシーズンを終えた。
原点に立ち返る
地元・千葉出身で、ファン、首脳陣から将来のエースと期待されながらも、唐川はそれに応えることができずにいた。もう一度、一軍の舞台で活躍するため。昨秋から原点に立ち返り、ストレートを磨くこと決意する。
二軍投手コーチにアドバイスをもらいながら、ボールの強さ、勢いを求めて取り組んだ。プロ9年目の今季は、春季キャンプから二軍で過ごしていたが、3・4月は二軍戦6試合に先発し、5試合で6イニング以上を投げ、「真っ直ぐの強さに手応えを感じていた」(唐川)。
取り戻した力強いストレート
二軍戦で安定した投球を披露し、満を持して臨んだ5月6日のオリックス戦で、一軍での今季 初登板を果たす。初回、西野真弘に投じた 初球はボールとなったが、ストレートのスピードは144キロを計測。この日は140キロ台を連発し、最速は146キロを記録した。「真っ直ぐでファールを取ったり、押し込んだりして投げることができたので、プラン通りできた」と試合を振り返り、敗戦投手になったものの、7回を2失点に抑え、昨秋からの取り組みに手応えを感じていた。
その後は、5月22日のオリックス戦で今季初勝利を挙げたが、6月19日の巨人戦で、1回3失点でノックアウトされるなど、好不調の波はあったものの、7月に入ってからは安定。7月7日の西武戦から4試合連続で、7イニング以上を投げている。
完封した11日の楽天戦の9回には 144キロを記録するなど、ストレートに力強さが戻り、かつての輝きを取り戻した唐川。指揮官も「今日は1人で投げ抜いてくれた。唐川に尽きます」と手放しで褒め称えた。
ただ、唐川は「次どういうピッチングをするかが大事。1週間準備をしっかりやっていきたい」と、今回の完封勝利に満足することなく、次の登板を見据えている。
先発が長いイニングを
ロッテの投手事情を見ると、守護神の西野勇士を始め、セットアッパーの内竜也、大谷智久など故障者が相次ぎ、リリーフ陣が手薄になっている。
伊東監督は「一人でも二人でも戦列に戻ってきてもらいたいが、現状では厳しい状況は変わらない。特に先発ピッチャーには1人で頑張ってもらいたい。先発が長く投げる事がチームを救うことになる」と話す。
苦しい台所事情の中、ここ最近の唐川はチームを救う働きを見せている。“復活”を遂げた男が、ロッテ投手陣を引っ張っていく。
文=岩下雄太