球界に衝撃
そのしらせは突然舞い込み、球界に大きな衝撃を与えた。
巨人・鈴木尚広の現役引退。ファンはもちろんのこと、チームメイトや海の向こうの元同僚からも驚きの声が漏れるほど、予期していなかった事態だった。
言わずと知れた巨人の切り札。“足のスペシャリスト”として常に相手の脅威であり続けた。晩年は代走がメインながらも、12年連続で2ケタ盗塁をクリア。憎らしいほどに強かったいわゆる“第2次原政権”では特に重宝され、鈴木の足で勝利をもぎ取ったと言っても過言ではない試合が何試合もあった。
今シーズンも10/10で成功率は10割。「まだできるのに...」こんな声が相次いで飛んだ。
痛すぎた“切り札”の引退
この決断が巨人にとって大きな痛手なのは間違いない。
昨オフのことを思い出してみよう。高橋由伸が監督就任のため突如ユニフォームを脱ぎ、井端弘和もコーチ就任のため現役を引退。するとどうなったか。代打の切り札を一気に2枚も失ったチームは、選手層の薄さを露呈する。2015年シーズンと今年の代打成績を比較してみよう。
【巨人の代打成績・比較】
・2015年:打率.244(3位) 7本(1位) 35打点(2位)
・2016年:打率.171(6位) 3本(4位) 26打点(5位)
ご覧のように昨年は各部門でリーグ上位の数字をマークしていたのに対し、今年は軒並みリーグ下位に低迷。テレビ中継を見ていて、勝負所でアップになる監督と控え選手のリストを見た時に「由伸がいたらなぁ」と思った巨人ファンの方も少なくなかったのではないか。
失敗を繰り返さないために...
そして今年、今度は走塁の“切り札”を失うことになった。
上述の通りベンチに居るだけで相手に脅威を与え、出てくれば球場の空気を一変させる。そんな選手はなかなかいない。
チームには過去4度の盗塁王を獲得した片岡治大をはじめ、吉川大幾や松本哲也、藤村大介といった足の速い選手は多い。しかし、「絶対に走る」と警戒されている試合終盤で盗塁を決めることができる選手というのは果たしているだろうか...。
シーズンはまだ終わったばかりだが、来シーズンへ向けた戦いはもう始まっている。代打の切り札枠の後継を見つけることができずに苦しんだ今年の反省を活かし、来シーズンに繋げなければならない。
鈴木に代わる“足のスペシャリスト”を準備することはできるのか。来季の大きな課題となる。