ゴンザレス、グライシンガー、クルーン、ラミレス...
そこには懐かしい名前が並んでいた。
仕事場を整理していたら、出てきたのは2009年の巨人優勝記念グッズの湯呑みだ。小笠原道大やラミレスはもちろん、グライシンガー、クルーン、ゴンザレス、イ・スンヨプ、越智大祐、東野峻といった選手名が刻まれている。
あれから8年...。今思えばこの09年のチームは巨人の長い歴史上でも特殊なチームだった。
なにせ4番打者にエースとローテ2番手、クローザーのすべてが外国人選手で占められていたからだ。今回はそんな7年ぶり21度目の日本一を達成した「2009年の原巨人」の懐かしの助っ人選手たちを振り返ってみよう。(選手の年齢、成績はすべて09年時)
▼ ディッキー・ゴンザレス(31歳)
成績:23試 15勝2敗 防2.11
ヤクルト在籍時の07年は右肘の手術で登板なし。リハビリから復帰した08年はわずか1勝に終わり自由契約に。その潜在能力を高く評価していた原監督率いる巨人が獲得するも、当初は年俸3000万円(推定)のアラサー右腕に対する注目度は低かった。
外国人枠の関係で開幕も二軍スタート。しかしペナント序盤、9連戦中に抑えのクルーンが右手中指の炎症で戦線離脱。すると5月3日の阪神戦でゴンザレスを先発起用。見事に移籍後初勝利を挙げると、5月は怒濤の5連勝で月間MVPを獲得。オールスター戦にも監督推薦で初出場。終わってみれば15勝2敗、防御率2.11という凄まじい成績を残し、日本ハムと戦った日本シリーズでも第1戦を任せられ勝利投手に。09年の巨人エースは間違いなくこの男だった。ゴンザレスは12年まで巨人に在籍し、13年からロッテに移籍するも未勝利に終わり、1シーズンで退団している。
▼ セス・グライシンガー(34歳)
成績:25試 13勝6敗 防3.47
バージニア大学出身の「投げるインテリジェント・モンスター」の異名を取り、ヤクルトに在籍していた来日1年目に16勝で最多勝獲得。オフにはNPB各球団で大争奪戦となり、08年から巨人に移籍すると、ここでも17勝を挙げ2年連続の最多勝に輝く。
09年は原巨人の開幕投手を務め、25試合に先発登板し13勝を記録。古巣のヤクルト戦は2年間で8勝1敗と無類の燕キラーぶりを発揮した。しかし右肘の故障もあり、このシーズンを境に失速。もう終わりかと思われた12年にロッテへ移籍すると12勝を挙げ復活してみせたが、翌13年限りで退団。ゴンザレスとはヤクルト、巨人、ロッテでそれぞれチームメイトになった。
▼ マーク・クルーン(36歳)
成績:46試 1勝3敗27S 防1.26
まだ大谷翔平がプロ入りする前、NPB最速投手といえばこの男の代名詞だった。横浜の3シーズンで計84セーブを挙げた剛腕ストッパーは、08年に巨人に移籍するといきなり41セーブで最多セーブのタイトルを獲得。
09年もキャリアハイの防御率1.26を記録し、胴上げ投手に。メジャー移籍したクローザー上原浩治の後釜という大役を見事にこなしてみせた。翌10年限りで退団するも、一部の荷物を川崎市の倉庫に残したままアメリカへ帰国。「なにが起こるか分からないぜ」と日本球界復帰のオファーを待ったが叶わず、12年シーズン前に現役引退を発表した。
▼ アレックス・ラミレス(35歳)
成績:144試 率.322 本31 点103
不動の4番打者として144試合フル出場。本塁打数は前年の45本から減少したが、打率.322でキャリア初の首位打者に輝いた。原監督も翌10年に発売された著書『原点』(中央公論新社)の中で「ラミレスはチームのお守り的な存在。彼がいることによって、チーム全体が大船に乗ったような気持ちになる」と絶賛。さらに「彼はよく部屋にやって来ては、野球のこと、チームのことを話していく。僕はラミレスはいい監督、いい指導者になると思う」とその野球IQを高く評価しており、16年シーズンからラミレスはDeNA監督として指揮を執っている。
亀井、松本哲らも躍動
ゴンザレス、グライシンガー、クルーン、ラミレス...。彼らNPB他球団出身の多国籍軍でなりふり構わず勝ち取った優勝と思いきや、この年の巨人は同時に27歳の亀井善行が5番打者として25本塁打を放ち、育成出身でゴールデングラブ賞を獲得した25歳の松本哲也が新人王を受賞した。
加えて20歳の坂本勇人がキャリア初の打率3割をマークし、主軸には全盛期バリバリの小笠原道大と阿部慎之助が君臨。外国人選手と若手が躍動する理想的なチーム編成だった。
あれから8年。すでに亀井や松本は30代中盤のベテランとなり、28歳の坂本はあの頃のキャプテン阿部のような立ち位置でチームをまとめている。
最強の助っ人陣を擁して日本一に輝いた2009年の原巨人。もしかしたら2017年の由伸巨人の命運もマシソン、マイコラス、カミネロ、ギャレット、クルーズ、マギーら多国籍軍団が握っているのかもしれない。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)