164キロ右腕と守護神争い
このオフ、例年以上に積極的な補強を進めてきた巨人。投手では、トレードで吉川光夫(前日本ハム)、FAで森福允彦(前ソフトバンク)と山口俊(前DeNA)を獲得したほか、新外国人としてメルセデス、そしてMLBのマリナーズで活躍したカミネロも獲得した。
昨季はパイレーツ、マリナーズの2球団で計57試合に登板し、2勝3敗1セーブ・8ホールド、防御率3.56という成績を残したカミネロ。
193センチの長身から投げ下ろす最速164キロの直球が最大の武器であり、スプリットにも絶対的な自信を持っていることもあって、沢村拓一とクローザーのポジションを争うことになるとの見方もある。
当の沢村も、昨季は37セーブを挙げて初の個人タイトルである最多セーブ投手に輝いた。推定年俸も5000万円アップの1億5000万円。球団もその活躍を評価している。ただし、セーブ数の陰に隠れてはいるが、昨季の投球“内容”としては、手放しで褒められたものではない。
「クローザー失格」という声も...!?
昨季の防御率は2.66。悪いとは言えないが、抑えに転向した2015年の1.32から大きく悪化している。
特にシーズン終盤に失点するシーンが目立ち、8月・9月の月間防御率はそれぞれ4.26と5.40。しかも、先発投手より投球回が少ない中継ぎにもかかわらず、リーグ最多の9暴投を記録するという不名誉な結果も残してしまった。9投球回当たりの暴投数を表す暴投率は1.26。これは、30イニング以上投げた投手の中で12球団ワーストの数字である。
2015年までの沢村は、決して暴投が多い投手ではなかった。プロ入り後から2015年までの5シーズンの暴投率と暴投数は、順に0.23(5暴投/200回)、0.11(2暴投/169回2/3)、0.28(5暴投/158回1/3)、0.62(5暴投/72回2/3)、0.26(2暴投/68回1/3)となっている。
与四死球率は2015年と大きな差はなく、極端にコントロールを乱したというわけではない。暴投激増の理由は不明だが、巨人のクローザーという重圧だけでなく、自身が続けてきた筋力アップで変わった体のメカニズムなど、さまざまな要因が絡んでの結果かもしれない。
シーズン終盤の不安定な投球や暴投の多さもあり、巨人ファンからも沢村を「クローザー失格」とする声が挙がった。
もちろん暴投はないに越したことはないが、威力ある直球が武器の沢村の場合、暴投を怖がることがアダとなる可能性も否定できない。
特に抑え転向後はシュートやスライダーが激減し、直球とフォークの2球種が配球の9割以上を占めている。暴投や四球を怖がって変に縮こまってしまえば、そのコンビネーションの力を削ぐことにも繋がりかねないのだ。多少の“荒れ球”になるような、全力で腕を振る投球こそが沢村の持ち味だと言えるだろう。
来年でクローザー3年目を迎える沢村。新助っ人・カミネロとの守護神争いを制し、周囲の批判をかき消すような投球ができるだろうか。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)