コラム 2018.07.27. 16:00

“愛知の星”西山小春、女子プロ野球の新星には「覇気」が宿る

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愛知ディオーネの新星・西山小春選手 [写真=別府勉]

5回目の入団テストでプロの道へ


 女子プロ野球界に新星が現れた――。

 育成チーム・レイアから今季、トップチームの愛知ディオーネに昇格して活躍を続けている西山小春選手だ。

 兵庫県出身で、現在まだ20歳の若き女子プロ野球選手は高校時代、全国でも数少ない女子の硬式野球部が存在する鹿児島県の神村学園でプレーしていた。そんな彼女が野球を始めたキッカケは何だったのか。

「小学校2年生のときに母から『塾へ行くか野球をやるか、どっちがいい?』と聞かれて、“野球をやる”と答えたのが、野球を始めたきっかけでした。あとは、兄が野球をしていたのもきっかけですね」

 すでに野球をしていた兄の背中を追い、さらに母の言葉が“野球女子”になるきっかけをつくった。そして、競輪選手だった父の言葉が“プロへの道”を切り開くことになる。ただし、その道のりは決して平坦なものではなかった。

「私は女子プロ野球の入団テストを5回受験しました。4回目(の受験で不合格となり)で社会人野球へ行こうと思っていましたが、父が『もう一回受けろ』と言ってきて…そうしたら、合格することができたんです。父は個人競技ですが、“諦めない”という気持ちの持ち方は一緒だな、と思います」

 同じアスリートである父の言葉を胸に、そして、プロの舞台で活躍する未来を描いて挑んだ5回目の入団テストで見事に合格を果たす。

 あくまでプロにこだわったのは、「アマチュアよりプロとしてプレーする方が、ファンの方たちの声援を受けながら、観客の皆さんに感動を与えられるので、やりがいがある」と思ったからだ。

 そして2017年、レイアに入団した西山は、プロ1年目のシーズンこそ打率.182という成績に終わったが、愛知ディオーネ入団後は打率.357(7月16日試合終了時点)と活躍。打撃成績の5位につけており、6月28日の京都フローラ戦(わかさスタジアム京都)からはチームのリードオフマンを務めている。


理想は足の速さを生かせる打順


 西山の持ち味は50メートルを6秒台で走る足の速さだ。本人も「出塁し、足を使ってかき回していくような選手になりたいと思うので、1番・2番が理想かな」と話す。

 高校時代から慣れ親しんだ打順でプレーできているのは、西山にとって大きいようだ。取材当日のアストライア戦(神宮)でも1番・右翼で先発出場し、2安打1打点の活躍を見せた。

 この状態を維持し続けることができれば、最優秀新人賞を獲得する可能性も考えられる。ただ、西山本人は「そういうのを意識したら逆に力が入っちゃうと思うので、打率3割を1年の目標としています。その中で結果として(新人賞が)取れたらいい」と、いたって冷静だ。


常に全力プレーがモットー


 背番号23をつける西山は、同じく23を背負うアストライアの川端友紀について、自身とは「タイプが違う」と言いながら、「あんなに打球を飛ばしてみたい」と願望に似た憧れを口にする。

 その川端は、8月に行われる「女子野球ワールドカップ」に日本代表(マドンナジャパン)として出場する。将来のマドンナジャパン入りについて、「夢ではなく、“目標”ですね」と言いきる西山の言葉には力強さを感じた。

 日本代表のユニフォームに袖を通した彼女の姿を見るのは、そう遠くないはずだ。


 そして取材の最後には、自身と同じ道を目指す“未来の女子プロ野球選手”に向けて、激励の言葉を語ってくれた。

「中途半端な気持ちで練習をするのではなく、常に頂点を目指して努力していったら“いつかトップ選手になれる”と思うので、諦めずに頑張って欲しい」

 それは、西山が常に心に秘めている二文字にも由来している。「私のモットーは“覇気”です。常に全力で取り組む姿勢ですね」

 5度の入団テストを経て女子プロ野球の第一線で活躍する西山の言葉には実感がこもっている。

 全力プレーが信条の彼女の目は、常に前を見据えている。屈託のないキュートな笑顔が魅力的なディオーネの背番号23――。球場でぜひ注目してもらいたい。


取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)

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