日本人では5人だけ
2018年のプロ野球はソフトバンクの日本一連覇という形で幕を閉じたが、そのソフトバンクを抑えてパ・リーグを制したのは、圧倒的な打力で勝ち進んだ西武だった。チーム防御率はリーグワーストも、それを補って余りある得点力で他を圧倒。その中心にいたのが、リーグMVPに輝いた4番の山川穂高である。2017年のシーズン途中からその才能を開花させると、真価が問われた昨季も不動の4番として超強力打線を牽引。パ・リーグではチームの先輩である2011年の中村剛也以来で7年ぶりとなる40本塁打をマークし、最終的には47本塁打で本塁打王のタイトルも獲得した。
その山川がこのオフに何度も繰り返してきた目標が、『シーズン50本塁打』である。昨年の数字を考えれば妥当にも思えるかもしれないが、この“50”という壁は本当に分厚く高いもの。過去にこの壁を乗り越えたのは9人だけで、日本人に限れば王貞治、野村克也、落合博満、小鶴誠、そして松井秀喜という5人だけだ。
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予測される打数減少が高いハードルとなる
【シーズン50本に届かなかった男たち】
▼ 49本
アレックス・カブレラ(西武/2001年)
アレックス・ラミレス(巨人/2010年)
▼ 48本
中村剛也(西武/2009年)
中村剛也(西武/2011年)
▼ 47本
タイロン・ウッズ(中日/2006年)
クレイグ・ブラゼル(阪神/2010年)
山川穂高(西武/2018年)
該当したのは6人。その中で日本人は中村と山川のみである。希代のホームランアーティストとして名をはせ、山川が尊敬する中村も、48本塁打を二度も記録しながら50本塁打に到達することはできていない。
中村の場合、惜しむらくはケガだ。2011年には全144試合に出場しているが、2009年はケガでの離脱があり出場試合数は128。打数は2011年の525に対して2009年は501にとどまった。もし、2009年のペースで打数が2011年と同じ525であったなら、2009年の中村は50本塁打を記録していた計算となる。
一方、昨季の山川の打数は541と、2009年・2011年の中村よりもかなり多い。本塁打の数はわずか1本差だが、その数字以上に本塁打を放つペースには開きがあるのだ。しかも、今季の山川の打数は昨季より減ることが考えられる。山川の打数の多さは西武の強力打線によるものだが、浅村栄斗の移籍でチームの打撃力は落ち、加えてタイトルホルダーとなったことで山川が勝負を避けられるケースが増えることも推測できるからだ。
「3本上乗せするだけならできそう」と思うファンも少なくないだろう。だが、山川の偉業達成には、ただ2018年を上回るというだけでなく、大きく上回るペースでの本塁打量産が求められる。
そんな高いハードルを乗り越え、王や野村、落合、小鶴、松井というそうそうたるレジェンドたちの仲間入りを果たせるか……。山川の挑戦がはじまる。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)