コラム 2020.05.27. 07:09

「夏の甲子園」戦後初の中止で浮き彫りになった日本高野連の“ダブルスタンダード”

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阪神甲子園球場 (C) Kyodo News

どうなる?“代替大会”の方法


 5月20日、日本高等学校野球連盟(以下、日本高野連)は、8月に開催が予定されていた『第102回全国高校野球選手権』と、その代表校を決める地方大会の中止を発表した。

 翌日のスポーツ新聞では、各紙が戦後初となる「夏の甲子園中止」を一面で取り上げ、数多くの高校野球OBや著名人もコメントを発表するなど、日本全国で大きな話題となっている。


 地方大会も含めて中止となったことで、現在、各都道府県の高野連で検討されているのが代替となる大会だ。

 香川と愛知では、中止が発表された直後に県独自の大会開催の準備を進めることを発表。茨城では、大会についての具体案も示されている。その一方で、授業再開や夏休み期間が不透明なことから、大会開催に消極的な地区もあるという。全国で足並みが揃わないことで、また様々な議論が起こりそうだ。

 6月以降は代替大会についての調整が大きな焦点となりそうだが、仮に大会を開催できたとしても問題は残っている。

 例年、夏の地方大会で敗れたチームは3年生が引退し、新チームがスタートするが、加盟校の多い都道府県では、甲子園大会期間中に早くも秋季大会がスタートしているところもある。ところが、代替となる大会の開催が8月にずれ込めば、新チームのスタートも遅れて秋季大会の日程にも影響が出てくるのだ。


 3年生と1・2年生を別々に行動させれば良いと思うかもしれないが、部員数やスタッフの数が不十分なチームはそのような方法をとることは不可能である。加えて、大会を行う会場や、現地でのスタッフなども問題も出てくるだろう。

 秋季大会の結果は、春の選抜大会の出場校にかかわってくるものである。そういう意味では、今回の夏の甲子園大会および地方大会中止の決定は、来年春の選抜にも影響してくる可能性が極めて高い。


中止後の方針を示さず、丸投げ…


 今回の件で残念だったことは、日本高野連は大会の中止を決定しただけで、その後の方針などについて触れなかった点である。

 代替大会の開催については、可能な限り支援するとは表明したものの、各都道府県高野連に任せるとしており、また秋季大会の開催についても、情報収集を続けてその時に判断すると答えるにとどめている。乱暴な言い方をすれば、全国大会と地方大会の中止を決定しただけで、後は各都道府県任せ、その先の秋季大会については方針も示すことなく結論を先送りしただけと言えなくもない。


 建前としては、日本高野連は、組織として都道府県高野連の上に位置しておらず、各地方大会については指示、干渉する立場にないということだろう。

 しかしながら、昨年春に新潟県高野連が投手の球数制限を独自に導入しようとした際には、全国で足並みを揃えて検討するために再考を申し入れている。このような対応を見ていると、その時の状況で口を出したり出さなかったりする、ダブルスタンダードで一貫性のない姿勢と言われても仕方がないだろう。


 春の選抜高校野球に続いて、夏の全国大会が中止となったことは残念ではあるが、大事なのはこの後どうするかではないか。そして、日本高野連に求められるのは、その方針を示すリーダーシップであるが、今のところそのような動きは見えてこない。プロ野球の選手会からは必要であれば援助を行う計画があるとも言われているが、連携に動いているという話もない。

 多くの先人たちの努力があったからこそ、高校野球が国民的な行事になったことは間違いないが、現在は甲子園大会を滞りなく行うためだけの組織になっているようにも見える。

 その甲子園大会が中止になった今だからこそ、日本高野連が先頭に立って、新たな時代の高校野球を築いていくための行動を一日でも早く起こしてくれることを期待したい。


☆記事提供:プロアマ野球研究所
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