長打力アップへ鈴木誠と新外国人クロンに高まる期待
日米の主砲が広島打線の命運を握っている。鈴木誠也と新外国人クロンで中軸を形成する今季。2人の融合次第で、リーグ随一の強力な打線が完成する。
鈴木誠は、今オフから大胆に打撃フォームを改造して、さらなる高みを目指している。左足を高く上げてタイミングを取り、スイング軌道はアッパー気味に修正。テーマを「地球に打つ」と表現し、その難解さも話題を呼んだ。打撃練習では、逆方向にも飛距離を伸ばしている。昨季の25本塁打のうち、右方向は1本のみだった。2月23日の中日との練習試合で放った「新打法1号」は右翼席に放り込んだ。新フォームが逆方向への長打力アップにつながれば、手が付けられなくなる。
さらに、今季から野手キャプテンに任命された。「僕自身やることは変わらない」と言ったのは本音だろう。羽月隆太郎、大盛穂ら若手にも惜しみなく助言を送り、求められれば堂林翔太ら先輩にも意見を伝える。本人にとっては特別なことではなくても、早速主将にふさわしい姿勢を見せている。
そんな主将に積極的に意見を求めるのが、新助っ人クロンである。2019年にマイナーリーグ3Aで38本塁打を記録し本塁打王に輝いた長距離砲。複数の日米球団が獲得に動く中、広島への入団を決断した。
「鈴木誠也を筆頭に、広島には素晴らしい選手がいる。初めての日本でのプレーなので、経験があり数字を残した彼らからたくさんのことを学んで、日本で成功したい」
19年に26本塁打を放ったバティスタが退団し、代わって昨季入団したピレラは、中距離タイプとあって11本塁打に終わった。16年からのリーグ3連覇中、チーム別本塁打数はリーグ1位2度、同2位1度を誇りながら、昨季は同4位タイの110本塁打に減少。球団は改めて助っ人に一発を求めたというわけだ。
「タナ・キク」コンビ再結成で隙を与えない打線に
確かな長打力を持つ2人をどの打順に置くかがカギになる。鈴木誠は昨季、4番で開幕しながら、チーム事情によって終盤から3番で34試合に先発した。首脳陣は、3年連続で4割を超える出塁率と走力も買っており、そのスタイルを存分に生かせる3番起用も視野に入れている。朝山東洋一軍打撃コーチは、「鈴木が3番なら、鈴木とクロンの間にコンタクト率の高い打者を挟みたい。クロンはクリーンアップを期待しているけど、6番の可能性もある」と走者を置いた場面での得点力に期待している。
2人はともに右打者とあって、松山竜平、西川龍馬の左打者が中軸に入ってサポートする。さらに下位打線に堂林、會澤翼が並べば、相手に隙を与えない打線が構築できる。この理想形を完成させるにも田中広輔、菊池涼介で形成する1、2番コンビの復活が欠かせない。今季から広島に復帰した河田雄祐一軍ヘッドコーチは「彼ら2人にはまだまだ中心として働いてほしい。1、2番に座ってくれればベスト」と期待を隠さない。
その同ヘッドが掲げるのが「つなぎの攻撃」である。その役割を体現する適任者として、リーグ3連覇に貢献した「タナ・キク」が再結成されたと言える。1、2番だけでなく、オープン戦から積極的な走塁や進塁打を徹底して、次の塁を狙う意識が植え付けられた。長打力のある打者を上位に並べるのが現代野球の主流。それでも、広島が得意としてきた細かい攻撃を取り戻すことを最優先に決めたのだ。
ひとまずレギュラー陣は、問題なく開幕を迎えることができるだろう。ただし、先発の固定化は、レギュラー陣を脅かそうとする若手の乏しさと直結しているとも言える。そんな状況でひと際光るのが高卒5年目を迎える坂倉将吾である。昨季81試合に出場し、打率.287、3本塁打、26打点のキャリアハイを残した。
「結果を残すことが当たり前になってくる。その中で自分ができることを怠らずにやる。信頼を含めて何とか勝ちに貢献できるようにしたいです」
春季キャンプ中に下半身のコンディション不良で離脱。それでも、チームに必要不可欠な存在には変わりない。さらには、高卒ドラフト1位として入団した中村奨成、小園海斗は、2軍で経験を積む段階から1軍での結果を求められる立場に移りつつある。3連覇を知るメンバーの奮起だけでは物足りない。新たな風を吹かせられる新星の登場が待たれている。
文=河合洋介(スポーツニッポン・カープ担当)