東京王者のエース左腕
ついに開幕した『第93回選抜高等学校野球大会』。「春はセンバツから」という言葉もあるが、今年のドラフト戦線もこの大会から大きく動いていくこととなる。
プロアマ野球研究所では、この春の大舞台に出場する有力候補も積極的に紹介していきたい。
今回は、中学時代から注目を集めていた“実戦力の高いサウスポー”を取り上げる。
▼ 本田峻也(東海大菅生)
・投手
・179センチ/73キロ
・左投左打
<2020年・秋季大会成績>
5試(32.1回) 防御率1.95 WHIP0.99
奪三振28 被安打16 与四死16 失点7(自責7)
奪三振率7.79 被安打率4.45 四死球率45
<主な球種と球速帯>
ストレート:135~143キロ
カーブ:118~110キロ
スライダー:118~125キロ
チェンジアップ:115~120キロ
☆クイックモーションでの投球タイム:1.36秒
日本代表にも選出された逸材
昨年秋の東京都大会を制した東海大菅生。その原動力となったのが、エースの本田峻也だ。
中学時代は小松加賀リトルシニアでプレーし、3年時には畔柳亨丞(中京大中京)らとともに侍ジャパンU-15代表に選出。国際舞台も経験している。高校進学後も1年秋から主戦となり、昨年夏は西東京の代替大会優勝に大きく貢献した。
筆者が実際にそのピッチングを見たのは、昨年秋の東京都大会・日大二戦だ。1回から6回まで毎回走者を許したものの、要所をしっかり締め、8回途中まで投げて1失点というさすがの投球でチームを勝利に導いた。
まず印象に残るのが、特徴的な投球フォーム。走者がいなくてもセットポジションから投げるスタイルだが、最初からホームベース方向に対して背中を向ける形でセット。右足を一塁側に踏み出し、そこから体を鋭くひねって投げ込んでくるのだ。
腕の振りはスリークォーターに近いオーバースロー。左打者にとっては、外のボールはかなり遠く見えていることは間違いない。加えて、右打者にとっても、内角のボールは自分の体に向かってくるような恐怖を感じるはずだ。
このように書いていると、高梨雄平(現・巨人)のような技巧派をイメージするかもしれないが、日大二戦でも最速は142キロをマーク。ストレートのスピードも、高校生としては申し分ないだけのものがある。
また、肘をしっかり立てて腕を振ることができるため、横というよりは独特の“斜め”の角度があるのも大きな武器。1試合あたりの四死球は少なくはないが、決してボールが荒れているというわけではなく、厳しいコースを攻めた結果の数字という印象だ。
プロ入りも十分に狙える器
変化球は打者の目線を変えるカーブ、対になるスライダーとチェンジアップの3種類をしっかり腕を振って低めに投げることができており、どのボールも質が高い。左打者の外だけでなく、内角に狙ってスライダーを投げ込んで腰を引かせることができるのも、高校生にとっては“高等技術”である。
さらに、中学時代から大舞台を経験しているだけあって、牽制やフィールディングなど、投げる以外のプレーが上手いのも大きな長所だ。チームには他にも力のある投手がいるため、最長で投げたのは日大二戦の7回1/3となっているが、決してスタミナがないわけではなく、連戦となった東京都大会の準決勝~決勝では2日で13イニングを投げ抜いている。
特に、決勝の日大三戦では7回をわずか1安打と圧巻の投球を披露。体格的なところや圧倒的なスピードはないため、高校から直接プロ入りするというタイプではないかもしれないが、独特のフォームとボールに角度のあるサウスポーはどの年代でも貴重である。
選抜の活躍次第では、U-15に続くU-18での侍ジャパン選出、そして将来的にはプロ入りも十分に狙える器の投手であることは間違いないだろう。
☆記事提供:プロアマ野球研究所