■ チームの連敗を5で止める好投! ベルトレとの対決が勝負を決めた
5連敗中のチームを救う好投だった。
6月16日、マリナーズの岩隈久志がレンジャーズ戦に先発。8回を投げて、6安打、無四球、1失点の投球で5勝目(6月18日現在)を挙げた。
カギを握っていたのが、4番を打つベルトレとの対戦である。メジャー通算384本を誇る右の長距離砲。岩隈はこのベルトレを苦手にしている。メジャー3年間での通算成績は25打数10安打でホームランは3本。5月21日に行われたレンジャーズ戦では、8回2失点で3勝目を挙げたものの、2回裏にベルトレにホームランを打たれている。1ボールから外を狙ったストレートが甘く入り、レフトスタンドに放り込まれた。
ホームベースから離れ、クローズドスタンスで構えるベルトレは、ここから左足を思い切り踏み込んでくる。アウトコースに強さを見せるタイプだ。テレビ解説の小宮山悟氏は、「インコースでいかに詰まらせるか」と盛んに話していた。誰が見ても、インコースが窮屈になるのはわかる。しかし、そこに投げ切れないからこそ打たれてしまう。ましてや、メジャーリーグの場合、日本に比べるとインコースのストライクゾーンが狭い。
岩隈がベルトレをどう攻めていくか――。ここが16日の焦点だった。
■ インコース攻めでベルトレに完勝 両コーナーの出し入れこそ最大の武器
結果は、3打数0安打。岩隈の完勝。
そして、3打席すべての結果球がインコースのツーシーム気味のストレート。ショートゴロ、レフトフライ、サードゴロに仕留めた。興味深かったのは、キャッチャーの構える位置だ。ベルトレに投じた7球中、スプリットの2球をのぞくと、すべてインコースだったのだ。
「投手の原点はアウトロー」とよく言われるが、対ベルトレに関していえばインコース。それもインローではなく、ベルト付近の高さだ。長い腕が邪魔をする分、腕に近いベルト付近のほうが窮屈になる。
これは、アウトコースにもインコースにも投げ分けられる岩隈だからこその投球術といえるだろう。今年は例年以上にコントロールが安定しており、与四球率は0.8(6月18日現在)。2012年(3.1)、2013年(1.7)の上をいく数字を残している。
6月に入ってから好調を極め、16日の登板を入れて直近3試合は7イニング以上を投げてすべての試合で3失点以内に抑えている。さらに特筆すべきは、96球(6月5日ブレーブス戦/7回・0失点)、108球(6月11日ヤンキース戦/7回3分の1・3失点)、106球(6月16日レンジャーズ戦/8回・1失点)と、短い球数でイニング数を稼いでいることだ。ストライク先行で攻め続けられている証だろう。
このコントロールがあれば、2013年に記録したキャリアハイの14勝を超える成績が期待できるはずである。
文・大利実(おおとし・みのる)
5連敗中のチームを救う好投だった。
6月16日、マリナーズの岩隈久志がレンジャーズ戦に先発。8回を投げて、6安打、無四球、1失点の投球で5勝目(6月18日現在)を挙げた。
カギを握っていたのが、4番を打つベルトレとの対戦である。メジャー通算384本を誇る右の長距離砲。岩隈はこのベルトレを苦手にしている。メジャー3年間での通算成績は25打数10安打でホームランは3本。5月21日に行われたレンジャーズ戦では、8回2失点で3勝目を挙げたものの、2回裏にベルトレにホームランを打たれている。1ボールから外を狙ったストレートが甘く入り、レフトスタンドに放り込まれた。
ホームベースから離れ、クローズドスタンスで構えるベルトレは、ここから左足を思い切り踏み込んでくる。アウトコースに強さを見せるタイプだ。テレビ解説の小宮山悟氏は、「インコースでいかに詰まらせるか」と盛んに話していた。誰が見ても、インコースが窮屈になるのはわかる。しかし、そこに投げ切れないからこそ打たれてしまう。ましてや、メジャーリーグの場合、日本に比べるとインコースのストライクゾーンが狭い。
岩隈がベルトレをどう攻めていくか――。ここが16日の焦点だった。
■ インコース攻めでベルトレに完勝 両コーナーの出し入れこそ最大の武器
結果は、3打数0安打。岩隈の完勝。
そして、3打席すべての結果球がインコースのツーシーム気味のストレート。ショートゴロ、レフトフライ、サードゴロに仕留めた。興味深かったのは、キャッチャーの構える位置だ。ベルトレに投じた7球中、スプリットの2球をのぞくと、すべてインコースだったのだ。
「投手の原点はアウトロー」とよく言われるが、対ベルトレに関していえばインコース。それもインローではなく、ベルト付近の高さだ。長い腕が邪魔をする分、腕に近いベルト付近のほうが窮屈になる。
これは、アウトコースにもインコースにも投げ分けられる岩隈だからこその投球術といえるだろう。今年は例年以上にコントロールが安定しており、与四球率は0.8(6月18日現在)。2012年(3.1)、2013年(1.7)の上をいく数字を残している。
6月に入ってから好調を極め、16日の登板を入れて直近3試合は7イニング以上を投げてすべての試合で3失点以内に抑えている。さらに特筆すべきは、96球(6月5日ブレーブス戦/7回・0失点)、108球(6月11日ヤンキース戦/7回3分の1・3失点)、106球(6月16日レンジャーズ戦/8回・1失点)と、短い球数でイニング数を稼いでいることだ。ストライク先行で攻め続けられている証だろう。
このコントロールがあれば、2013年に記録したキャリアハイの14勝を超える成績が期待できるはずである。
文・大利実(おおとし・みのる)