ヤクルト戦で放った2本のタイムリーは“よい時”の阿部をイメージさせる打球
7月1日~7月3日、マツダスタジアムで、オールスターゲーム前、最後となる直接対決が行われる。一時、9連敗を喫するなどチーム状態を落としたが、悪い流れを断ち切った広島と、交流戦を優勝で終えた巨人がぶつかり合う。
その巨人が前半戦でもたついた要因は、チームの要・阿部慎之助の不振にあった。体のキレがなく、スイングに力強さもない。試合を観ていると、明らかに疲れているように感じられたほどだ。投手ではないにせよ、ある部分では“勤続疲労”的なものかもしれない。
その阿部、じつはセ・リーグの打撃成績最下位(.237 6月30日現在)にいる。まさかと目を疑う数字なのだが……そのどん底から一転、復調しそうなのである。
6月28日の対ヤクルト戦、初回のチャンスでヤクルトの先発・ナーブソンのアウトコース初球のストレートを一振りでしとめライトオーバーのタイムリーヒットを放てば、4回・満塁の場面でもライトへライナーのタイムリーヒット。間違いなく、この2本のヒットはよい時の阿部の打球だった。
実際、試合前に解説者の高木豊氏がこう語っている。「阿部と話をしたのだけど、『絶好調です。見ていてください』と言うんですよ。阿部がそういうことを言うのは珍しいからよほど手ごたえがあるんじゃないかな?」。まさに有言実行、自らの調子が完全に戻ったと阿部本人が確信し、その試合で結果を出したのである。
疲れが取れてスイングに鋭さ戻る 阿部を乗せたら巨人の独走も!
この阿部の劇的な変化に関しては、交流戦終了後に5日間試合が空いたことが大きかったと思う。どこか本調子でないまま試合が続いていたら、“絶好調宣言”もなかったはず。体を休ませつつ、自分のペースで調整する時間を取れたことで感覚を取り戻せたのではないだろうか。
要である阿部が打つと、チーム状態がグンと上がるのはここ数年の巨人を見ていれば一目瞭然。当然、広島サイドからしたら眠っていてほしかった存在である。ならば、1日からの天王山、阿部のバットをどう広島投手陣が封じ込めるかにかかっている。恐らく、前田健太、大瀬良大地のふたりは先発が確定していて、もう一人はファーム調整中の九里亜蓮を昇格させて投げさせるだろう。
その3人が、どう阿部に立ち向かっていけばよいのか? ポイントはインコースにどれだけ強いボールを投げ込めるかに尽きると思う。6月28日、ヤクルトのバッテリーは、阿部に対しアウトコース一辺倒の攻めで痛打を食らった。球威のないナーブソンだから仕方ないのかもしれないが、結局、一流打者にその攻めは通用しない。ましてや、「調子は戻った」と言い切る強打者・阿部である。幸い、この直接対決で先発が予想される3人は、若くて力のあるボールを投げられる投手だ。阿部に“踏み込ませない”インコース攻めができれば、十分に戦えるはず。
この3連戦、巨人が広島を叩きのめすようなら、一気に独走態勢に入るだろう。チームを勢いづかせる阿部のバットを、もう一度眠らせることができれば、まだまだ広島は食い下がれると見るが……マツダスタジアムの熱戦を楽しみにしたい。
文=岩川悟(いわかわ・さとる)