防御率は「0.72」“サイヤング・クローザー”誕生も現実味
今季のメジャーリーグは、30チームのうち18チームが勝ち越し(現地時間1日終了時点、以下同)、このうちガーディアンズとフィリーズが勝率6割を超える快進撃を見せている。
メジャー最高勝率は、ア・リーグ中地区首位を走るガーディアンズで.611(66勝42敗)。開幕から約4か月間で、4連敗が一度もない安定した戦いぶりを披露している。
打線は28本塁打のホセ・ラミレスと、23本塁打のジョシュ・ネイラーが中心で、今季ここまでメジャー13位の501得点を叩き出している。この2人が打てないと打線の威力は半減するが、残り2か月間で第3の打者は現れるか。
開幕からチームの躍進を支えてきたのは投手陣の方である。
今季のチーム防御率3.63は、ブレーブス(3.45)、マリナーズ(3.46)、フィリーズ(3.55)に次いでメジャー4位で、投手力はリーグ屈指と呼んでいいだろう。
ただし、先発と救援に分けると、両者の間には大きな隔たりがある。
先発投手陣は2枚看板のタナー・バイビーとベン・ライブリーは間違いなくエース級の働きを見せているものの、3番手以降の投手は大不振。先発防御率の4.49はリーグ24位にすぎず、2人以外が先発の試合では苦戦を強いられることも多い。
一方で、メジャー断トツの防御率2.47を誇るのが救援陣だ。同2位のブレーブスが2.97なので、その差は歴然。ガーディアンズ救援陣の力が抜きんでていることがよく分かるだろう。
中でもサイヤング賞争いにも顔を出しそうな活躍を見せているのが、守護神を務める26歳のエマニュエル・クラセだ。
2021年に24セーブを挙げ、若くして抑えに定着したクラセ。22年に42セーブ、23年に44セーブを挙げるなど順調に成長を遂げてきた。ただ21年と22年は1点台だった防御率が昨季は3.22に悪化。今季は真価が問われていたが、ここまで51試合に投げて、4勝1敗33セーブ、防御率0.72と、キャリアイヤーと呼ぶにふさわしい成績を残している。
そんなクラセの持ち球は2つ。投球数の8割以上を占めるカットボールは、平均球速が160キロに迫り、打者の手元で小さく鋭く曲がる。また、平均球速145キロのスライダーは縦に鋭く落ちるのが特徴だ。この球が低めに決まったとき、相手打者はファウルを打つことも難しい。たった2つの球種だが、そのクオリティーは格段にアップ。昨季までにはなかった“えぐみ”を醸し出している印象だ。
クラセがチームを優勝に導き、防御率0点台を維持、かつセーブ数を「50」の大台に乗せることができれば、サイヤング賞の受賞も決して夢ではないだろう。
救援投手による同賞受賞は2003年に55セーブを記録したエリク・ガニエ(当時ドジャース)が最後。ア・リーグでは、1992年に51セーブを挙げたデニス・エカーズリー(アスレチックス)までさかのぼらなければいけない。果たしてア・リーグに32年ぶりとなる“サイヤング・クローザー”は誕生するか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)