得失点差はリーグワーストのマイナス85
8月に入り、各球団が100試合近く消化してもなお混戦が続いているセ・リーグ。阪神は、48勝46敗1分で首位のヤクルトに0.5ゲーム差の3位につけている。チーム打率.240は巨人と並びセ・リーグワースト。こちらもまたリーグワーストの303得点に、リーグワースト2位の388失点。この得失点差マイナス85もリーグワーストだ。そのような成績でも優勝を争える位置につけているのは、本当に不思議である。
得失点差でリーグ最多のマイナスを記録していながら、上位につけている理由のひとつに、接戦に強いという側面がある。実際、今季の阪神は1点差の試合で18勝11敗。これは、リーグトップの勝率だ。
接戦で勝ちを拾うためには、当然ながら少ないチャンスを確実にものにする必要がある。例えば、満塁の場面がそうかもしれない。塁がすべて埋まっている大量得点のチャンスなのだから、少しでも多くの得点をあげておきたい。
その満塁で、無類の強さを発揮している選手がいる。プロ10年目を迎えた新井良太である。
今季の新井は満塁で6打数5安打9打点!
中日から移籍後、その存在感をバットで示してきた新井だが、今季も昨年の不調をひきずったままだ。60試合の出場で打率.186、2本塁打、12打点と成績を伸ばせていない。
しかし、前述したように満塁の場面で新井は無類の勝負強さを発揮する。なんと、6打数5安打、打率.833で打点は9。今季のトータルの打点が12であるから、そのほとんどを満塁の場面で記録しているということになる。その上、ゲームの行方を左右する場面でよく打っている点もポイントだ。
5月6日の中日戦では、9回2アウトから追いつき、なおも満塁の場面でサヨナラタイムリー。同21日の巨人戦は1点ビハインドの8回裏1アウト満塁で代打として登場し、同点の犠牲フライ。その後の鳥谷の勝ち越しタイムリーにつなげた。
7月12日の巨人戦では8回に1点を勝ち越したあとにダメ押しのタイムリー。同22日の巨人戦ではスタメン出場し、初回に1アウト満塁から走者一掃の先制タイムリーを放った。5月6日の中日戦から満塁の場面では6打席連続で打点をあげていることになる。
満塁の場面は打点をあげやすいこともあるが、凡退するとチームに与える落胆も大きい。プレッシャーがかかる場面で、ものともせず結果を残している新井の活躍は見事だ。
このところの新井は、対左投手の試合においてスタメンで起用されることはあるものの、三塁のポジションは今成亮太がレギュラーを奪取した感が強い。主戦場は代打になりつつある現状を打破するには、その勝負強さを様々なシチュエーションで見せなければならないだろう。
史上空前の大混戦はまだしばらく続きそうだが、ここぞの試合・場面でチャンスに強い新井をうまく起用していくこともまた、10年ぶりのリーグ優勝に近づくひとつの手かもしれない。
そして再び、満塁の場面で新井が打席に立ったらどんなドラマを生み出してくれるか。大いに注目したい。
文=京都純典(みやこ・すみのり)