野球漬けの日々
午後8時半過ぎにはゲームセットを迎えた7月5日のヤクルト戦終了後、帰り支度を整えた関根大気が駐車場に姿を現したのは、時計の針がきっかり深夜12時を指したときだった。バッティング練習、食事、半身浴を済ませ、あとは寮に帰って寝るだけだという。
文字通り“野球漬け”の生活を送っている関根は、4-0でDeNAが勝利したこの試合、7回に代走で途中出場した。2点リードの8回には1死一、三塁の好機で打席に立った。そして一塁走者が盗塁を決めて二、三塁となったところでスクイズを敢行すると、相手守備のミスも絡んで2点が転がり込む。荒れ球の投手のボールを一発できっちり転がしたこと、9回には3番から始まる強力ヤクルト打線の攻撃が控えていたことを考えると、極めて価値のある2ランスクイズとなった。
「一、三塁という状況で、(スクイズも含めて)いろいろな可能性を考えて打席に入ることができました。9回を2点差で迎えるか、4点差で迎えるかで守る側の気持ちは全然違う。普段、あんまり貢献できていないので、貢献できてよかったなと思います」
普段、あんまり貢献できていない――そう語るとおり、関根の出場機会は限られているのが現状だ。
熾烈な競争
オープン戦で右肩を脱臼して出遅れた今シーズン、4月30日に復帰を果たしてから7試合連続で1番打者としてスタメンに起用された。しかし、筒香嘉智と梶谷隆幸という絶対的なレギュラーが存在する外野に残された枠は1つだけ。決してスランプに陥ったわけではなかったが、激しい競争から打撃好調の桑原将志が抜け出す格好となり、関根の出番は徐々に減少していった。
関根は努めて冷静に言う。
「結果を残せていない自分がつくり出してしまった今の立場なので。自分のやるべきことはちゃんとやって、毎日を過ごして、試合に臨む。その中で結果が残れば、またスタートで使ってもらえるかもしれないし、そのまま結果を残せなければ二軍へ行く。ただそれだけです」
不満を一言も口にせず、矛先を自身に突きつけるところが関根らしい。そして、そうした姿勢こそが向上心の源となっている。
負傷離脱により得た学び
右肩脱臼で戦線離脱を余儀なくされた関根は、焦ったところでケガが早く治るわけでもないという割り切りから、治療とリハビリの期間を「学びの時間」と位置づけた。
中でも、栄養学に対する関心は高く、一つの理論を実践に移している。それは「肉類の摂取を控える」というものだ。
「いろんな栄養士の方がいて、いろんな理論がある。僕が信じている栄養学ではそれ(肉類を摂取しないこと)を勧めているので、今は挑戦している段階です。食事を変えたらこんなに体が変わるのか、ということは実感しています。体重は79kgから75kgまで4kg減りましたが、それが悪いことだとは思わないし、今まで無駄なものがあったんだと思っています」
増量によるパワーアップを狙う選手も多い中で、体重減につながる取り組みは異色に映る。だが、関根はきっぱりと言う。
「今の食生活が一番合っていると感じているし、(体の動きやすさなどの良い感覚が)もしなかったら、もうやっていないと思う。僕はホームランを打つタイプでもないので、体がうまく動いて、ケガをしない体になってくれることを信じてやっています。これから夏場を迎える中でどうなっていくのか。結果を残すためにいろいろ考えながらやっていきたい」
「もう21歳」という危機感
高卒3年目、6月28日には21歳の誕生日を迎えた。客観的に見ればまだまだ若手でも、本人の意識は違う。
「3年目で結果を出されてスター選手になった方々も多い。もちろん毎年が勝負ですけど、3年目は大事な年だと考えています。僕の中では『もう3年目になってしまった』。年齢的にも、20歳か、若いなっていう年齢から『もう21歳になってしまった』という感覚なんです」
シーズンは間もなく折り返して、勝負の後半戦に入る。首位広島を追撃するためには、現在のレギュラーのみならず、ベンチも含めた総合力が重要になってくるはずだ。
「まだ試合は半分弱ある。僕が少しでもチームに貢献できれば、順位が上に行く可能性も増えてくると思うので、挽回できるよう一日一日、必死でやっていきます」
まるで求道者のように野球にストイックに向き合う若者は、ただ前だけを向いて日々を過ごしている。その努力が報われるチャンスはまだまだ十分に残されている。