各球団の“世代交代”を斬る!
80年以上を誇るプロ野球の歴史の中で、「黄金時代」を築いたチームといえば...?
多くの人が思い浮かべるのが、ON時代の巨人。または秋山・清原時代の西武か。他を寄せ付けない強さで、毎年のように優勝をかっさらっていく。
もちろん、それだけの強力なメンバーが揃っていたということも大きい。ただし、それだけでは「黄金期」は築けない。求められるのは常に進化し続けること。“主役”の選手がいれば、それを脅かす存在が台頭し、そこで生まれる競争がチームを強くする。
常勝球団にはそういったサイクルが確立されており、常にスムーズな世代交代が実行されてきた。
強いチームを作るうえで、欠かせないキーワードになるのが“世代交代”。では、現在のプロ野球12球団はどれだけそれが実行できているのだろうか…。
多くのチームが若返りに成功!
今回は、そんな12球団の“世代交代”事情を調査。打者ならば打席数、先発投手はイニング数、救援投手はセーブ数やホールドポイントなどを基に、各球団から18人(野手9人、投手9人)の選手を主力級選手として選。その18人の平均年齢から、各球団が中長期的にどういうステージにいるのかを調べた(※数年で帰国することも多い外国人選手は除き、年齢は満年齢とする)。
さらに2015年シーズンの主力級18人の年齢と比較し、各球団の主力級がどれだけ若返っているのか、もしくは老け込んでいるのかもまとめてみた。
まずはセ・リーグ編。2015年と2016年(6月13日現在)の主力級18人の平均年齢と増減幅は以下の通りだ。
【主力級選手の平均年齢・2016年】(※若い順、カッコ内は2015年の平均年齢と順位)
1位 26.3歳 DeNA(27.3歳/1位) =1.0歳の若返り
2位 28.2歳 中日(29.44歳/5位) =1.2歳の若返り
3位 28.3歳 巨人(29.39歳/4位) =1.1歳の若返り
4位 28.7歳 広島(28.4歳/2位) =0.3歳の高齢化
5位 29.7歳 阪神(30.4歳/6位) =0.7歳の若返り
6位 29.8歳 ヤクルト(28.9歳/3位)=0.9歳の高齢化
こうしてみると、広島とヤクルトを除く4球団が若返りに成功していることがわかる。
昨季リーグ優勝を果たしたヤクルトは3番目に若いチームだったが、今季にかけて世代交代には至らず。一気に“リーグ最高齢”のチームになってしまった。
それが現在低迷している直接的な原因とは言わないが、このままでは来季の平均年齢が30歳を超える可能性もあり、今季浮上の兆しがなくなった時には積極的な若手起用が望まれる。
劇的に若返ったDeNA
現在首位を走る広島は、わずかに平均年齢は上がっているものの、今季の戦い方を見る限りでは“成熟した”分と見ていいだろう。
野手・投手ともに脂が乗り切った26~28歳くらいの選手が多く、今年が優勝への最大のチャンスだと言える。ただし、たとえ今年は優勝を逃したとしても、今後数年は優勝争いの常連チームにはなりそうなチーム構成といえる。
また、最も若かったのが“新鋭”DeNA。2番目に若い中日に1.9歳の差をつけた独走状態である。
今季はラミレス新監督のもと、苦手の交流戦で勝ち越すなどその若さはプラスに働いている。特に投手陣では単に若返っているだけではなく、内容もしっかりと伴っているのは頼もしい限り。あとは野手で筒香と並ぶ和製クリーンアップ候補が育てば、DeNAに黄金時代がやってきてもおかしくない。
二極化が進む巨人と阪神
3位につける巨人は、投手陣がリーグで最も若く(25.9歳)、野手は最も高齢(30.8歳)と二極化が進んでいる。
常に勝つことが求められる球団でもあり、世代交代は容易ではないが、阿部や村田の後継者をいかに早く育てられるか、数年後のチームの浮沈はこれにかかっている。
阪神は巨人とは逆で、投手の高齢化が進む一方、野手は飛躍的に若返った。
今季新たに“主力級”に加わった高山、原口、北條、横田はいずれも24歳以下。主力級野手の平均年齢は昨季の31.1歳から一気に27.6歳まで若返った。
ただし、投手陣は藤浪、岩貞、岩崎以外の主力級6人は30歳以上という偏った構成(巨人の投手で30歳以上は9人中1人のみ)。昨季プチブレークした歳内、松田あたりの成長が待たれる。
最後は、昨季2番目に高齢だった中日。今季は1.2歳もの若返りに成功したが、ここ数年チームのウイークポイントになっている“ポスト谷繁”を育てられるかどうかが中長期的なカギになりそうだ。
また、ドラフト1位ルーキーの小笠原あたりが早めに一軍定着を果たせば、DeNA並みの若返りもあり得るだろう。
昨季から今季にかけて一気に世代交代が進んだセ・リーグ。1.0歳以上の若返りは、12球団の中でも中日、巨人、DeNAだけだ。特にリーグ唯一の26歳台という若さを誇るDeNAの今後の戦い方には注目だ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)