チームの悪しき前例を覆す今季のDeNA
DeNA投手陣が好調だ。チーム防御率3.02は王者・ソフトバンクの3.00に次ぐ12球団2位。6月12日のオリックス戦では、山口俊が2試合連続の完封で5勝目を挙げ、3連戦ではわずかに1点を失ったのみ。パ球団の打撃力に屈する場面が目立つ他のセ球団を尻目に、交流戦順位で4位、リーグ単独2位に浮上した。
開幕直後から敗戦が続き、5月3日時点で負け越しは早くも11。セ・リーグの借金を独占していた。しかし、山口の他、ルーキーらしからぬマウンド度胸を見せつける今永昇太や、石田健大、久保康友ら、先発陣の調子が上向くのと比例してチームも急上昇。借金を完済し、貯金1とした。また、クローザー・山崎康晃を中心に、田中健二朗、三上朋也、須田幸太ら救援陣も抜群の安定感を誇る。
チームは長く低迷を続けている。事あるごとに「投手力がネックだ」と言われてきた。それがいまや、リーグ一の投手王国となりつつあるのだ。また、DeNAが苦手としてきたのが交流戦。昨季は期間中に10連敗を喫し、わずか11年の交流戦の歴史のなか5度目の最下位に沈んだ。それをきっかけにチームは失速し、結局最下位になっている。
安定感を欠く投手陣に、交流戦での弱さ――それらのウィークポイントを、今季のDeNAは完全に覆しつつある。昨季のヤクルトが、破壊力抜群の打線と万全のリリーフ陣を誇るチームに変貌して優勝したように、常勝集団ではないチームがジャンプアップするには、大きな変化が必要不可欠だろう。今季のDeNAは、まさにそれに当てはまるチームなのだ。
ベテランから若手まですべてが好調な広島打線
他チームに目を転じれば、昨季覇者のヤクルトはチーム防御率5.07と投手陣が完全に崩壊。巨人と阪神は貧打に悩み、中日は投打ともに決め手を欠く感が否めない。DeNAにとっての当面のライバルは、昨季のヤクルトを凌ぐ打撃力で首位に立つ広島だろう。
黒田博樹、新井貴浩というベテランが投打の柱としてどっしりと構え、野手陣では丸佳浩、菊池涼介、田中広輔ら“89年組”も躍動を続ける。なおかつ、鈴木誠也といった若手までもが台頭し、助っ人・エルドレッドも例年以上に好調だ。
その強力打線が生み出した得点は12球団トップの304。リーグ5位であるDeNAの227をはるかに上回る数字だ。一方で、先述したようにチーム防御率ではDeNAがリーグトップの3.02。広島はリーグ4位の3.60。言うなれば、「投」のDeNAと「打」の広島の対決といった図式である。
もちろん、“混セ”から抜け出す可能性はどこのチームにもある。ただ、どこか空気が重い他球団と比べ、今季のDeNAと広島には悲願へと向かう“高揚感”のようなものを感じる。まだまだ結論を急ぐには早過ぎるかもしれないが…。この2チームのリーグ優勝争いが現実味を帯びてきたと見るのは、間違いではないように感じる。
※数字は2016年6月12日終了時点
文=清家茂樹(せいけ・しげき)