球界の顔になった2人
2015年、プロ野球界の“主役”を張った男といえば……。
真っ先に思いつくのが、ソフトバンクの柳田悠岐とヤクルト・山田哲人の2人だろう。
なんと言っても、ともに「打率3割・本塁打30本・盗塁30個」のトリプルスリーを達成。「トリプルスリー」というワードは球界を飛び出し、年末恒例の「流行語大賞」では年間大賞に選ばれるなど、社会現象になった。ちなみに、同一シーズンで2人のトリプルスリー達成者が出たのは、実に65年ぶりのことである。
それだけでなく、柳田は打率.363というハイアベレージで首位打者に輝き、出塁率.469という驚異の数字で最高出塁率のタイトルも獲得。山田も史上初となる本塁打王と盗塁王のW受賞を成し遂げ、こちらも最高出塁率を獲得。2人揃ってチームの優勝に大きく貢献し、リーグMVPに輝くなど、もはや2人のためのシーズンと言っても過言ではなかった。
柳田に立ちはだかった新たな壁
ところが、迎えた2016年シーズン。柳田の前に新たな壁が立ちはだかった。
相手バッテリーからの「異常なまでの警戒」――。昨年の成績を考えれば、マークが厳しくなるのも当然といえば当然のこと。しかし、それにしたって度を超えているのではないかと思うような攻め方も増えた。
それを象徴するのが、4月に達成された「18試合連続四球」のプロ野球タイ記録。柳田は、あの王貞治氏が持つ記録に肩を並べている。
ここまで71試合に出場し、選んだ四球は66個。これは両リーグで見てもトップの数字である。打率が昨年よりも6分近く落ちる.302でありながら、出塁率は.453でこちらも両リーグトップ。苦しみながらも、とにかく塁に出ることでチームに貢献してきた。
個人成績では“明暗”も...?
元はといえば、不安を抱えた状態で迎えたシーズンの開幕だった。昨オフに右肘を手術し、キャンプも二軍からのスタート。患部の状態もなかなか快方に向かわず、開幕に間に合うかどうかという話も挙がったほどである。
しかしながら、そんな中で男は開幕から試合に出続けた。打席に立ってもなかなか勝負してもらえないもどかしさの中、自らを制してチームの為に徹してきた。
その結果、自らの数字は落ちる。山田が今季も快調に成績を伸ばし、2年連続のトリプルスリーどころか野手タイトル6部門制覇などという夢のような偉業に挑戦している一方で、柳田の成績は軒並み下降。2年連続トリプルスリーに関しては、かなり厳しい状況となっている。
それでも、チームの順位を見てみるとどうか。ヤクルトが最下位に苦しんでいる中で、ソフトバンクは今年も首位を快走している。個人間で2人の成績に“明暗”は分かれているが、チームの成績で見るとそれが逆になる。
パ5球団の「対柳田」に注目!
ちなみに、そんな柳田に対して逃げずに立ち向かっているチームがある。それが西武だ。
ここまで柳田が選んだ四球66個のうち、西武が与えたのは5つだけ。各チームが11個~14個の四球を与えている中でこの数字は際立つ。
真っ向勝負の西武に対し、柳田は楽天とロッテに次ぐ.314の打率をマーク。本塁打3本は球団別トップの数字だ。
この成績を見て、他の4球団はどう考えるだろう。「やっぱり勝負しないほうが正解」なのか、はたまた「うちならもっと上手く抑えられる」なのか……。
後半戦は、西武を含めた5チームの「対柳田」に注目だ。
▼ 柳田悠岐・成績詳細
71試 打率.302(252-76) 本塁打10 打点44 得点49
二塁打16 三塁打4 塁打数130 盗塁12 盗塁死2
犠打0 犠飛0 四球66 敬遠2 死球4 三振58
出塁率.453 長打率.516 OPS.969