春先はビハインドゲームで存在感
「負けている場面、勝っている場面で投げても0に抑えていかなければいけないというところは変わらない。(ビハインドゲームと)同じようにじゃないですけど、力まずにいこうと思ってやっています」。
南昌輝は現在、勝ち試合の8回を任されている。今ではチームに欠かせない存在となっているが、昨季はプロ1年目の2011年以来、1度も一軍のマウンドで投げることなく、悔しいシーズンに終わった。
「去年あがれなかった悔しさをぶつけてやろうと思っていた」
春季キャンプを一軍でスタートさせると、オープン戦では4試合(4回1/3)を投げて、3失点。防御率は6.23といまひとつな内容だったが、2013年以来となる3年ぶりに開幕一軍の切符を掴んだ。
開幕一軍の座を勝ち取った南が、春先に任されたポジションは、先発投手が早いイニングで降板した後に投げるビハインドゲーム。いわゆる敗戦処理だった。
「抑えていかなければ一軍に残ることができないので、1試合、1試合、しっかり投げないといけないと思っていた」。
春先は、セットアッパーの内竜也、守護神の西野勇士をはじめ、勝ち試合の7回を務めていた益田直也と松永昂大、ロングリリーフの藤岡貴裕の活躍がクローズアップされる中、南は敗戦処理で、結果を残し続けていた。
特に5月は8試合に登板し、登板数を上回る12イニングを投げて、失点はわずかに1。防御率は失策絡みの失点だったため、0.00を記録。6月も11試合に登板して、防御率1.59と地味ながらロッテのリリーフ陣を支えていた。
敗戦処理からセットアッパーへ
転機が訪れたのは7月。開幕からセットアッパーを任されていた内竜也が、右肘痛のため7月2日に一軍登録を抹消となった。6月までは29試合に登板して、ホールド数はわずかに2つだったが、7月は6月までを上回る5ホールドをマーク。ビハインドゲームでの登板が多かった南は、徐々に勝ち試合での登板を任されるようになった。
さらに、守護神の西野が右肘痛、昨季セットアッパーを務めていた大谷智久が右膝の内側側副靭帯の損傷で離脱。左の藤岡と松永も、不調で二軍調整中とリリーフ陣が危機的状況に瀕している。
そんな中、南は7月31日の楽天戦から勝ち試合の8回を任されている。同日の楽天戦で、2点リードの8回から登板すると、1安打を浴びたものの、2つの三振を奪い無失点に抑えた。8月6日のオリックス戦では、2-0で迎えた8回から登板し、三者連続三振に抑える完璧なリリーフを披露した。
シーズンが残り50試合を切り、大事な試合が続いていくことを考えると、勝ちに直結する南の役割は非常に重要になる。南は「調子うんぬんとか言っている場面ではないので、良いパフォーマンスで投げられることだけ考えている。なんとかチームのために、僕の力で貢献できるなら頑張っていきたい」と話す。春先の敗戦処理から、セットアッパーにまで上り詰めた南。チームの“ピンチ”を“チャンス”に変えた男が、勝利のバトンを繋いでいく。
文=岩下雄太