俊足を売りにする期待の2年目
2015年のセ・リーグ制覇から一転、昨季は5位に沈んだヤクルト。今季も課題である投手陣の整備は追いついておらず、それほど前評判が高いわけではない。
ヤクルトといえば何といっても破壊力抜群の打線が売り。その中心を担うのが、球界屈指の打者に成長した山田哲人と怪力・バレンティンの2人。そして2年前に首位打者に輝いた川端慎吾や、昨季の故障から復活を期す畠山和洋が脇を固める。順調ならこの4人が2番から5番の打順を務めることになるだろう。
その4人の前を打つ1番打者の出塁率が一つのカギとなるが、昨季は移籍組の坂口智隆が主に1番を担い、出塁率.375と期待に応えた。しかし、1番打者としては物足りないシーズン7盗塁に終わっている。その坂口もすでに32歳。外野のレギュラー陣である雄平とバレンティンも同じ32歳と、3人そろって中堅からベテランの域に差し掛かっている。
そこで4人目の外野手として期待したいのが、昨季、新人ながらイースタンリーグで盗塁王に輝いた山崎晃大朗だ。二軍では、打率.251ながら出塁率は.358と1番打者として及第点の数字を残した。7月には、一軍デビューも果たし、7試合に出場。しかし18打数3安打(打率.167)と厚いプロの壁にぶつかりシーズンを終えた。
日本大学からヤクルトに入団した左投げ左打ちの小柄な俊足外野手という経歴は真中満監督を思い起こさせる。レギュラー外野手の“高齢化”もあり、真中満監督をはじめ、首脳陣も次の5~10年を任せられる若い外野手の育成は必須と感じているだろう。
そして山崎の“足”はチームには魅力的に映っているはずだ。昨季のヤクルトは、広島に次ぐリーグ2位の82盗塁をマークしたが、2桁盗塁は山田だけだった。その山田も昨季終盤は故障のため、30盗塁に乗せるのがやっとだった。山田以外の俊足選手がいれば、攻撃のバリエーションも増え、ライバル球団の投手陣には脅威となるだろう。
山崎としては、まずはオープン戦で首脳陣にアピールし、開幕一軍を狙いたいところ。そうすれば、代走や守備固めなど出場機会は与えられるはず。そこから一気にレギュラーを奪えるかどうかはその打力にかかってくるだろう。
果たして山崎は2年目にしてブレークすることはできるだろうか。もしレギュラーに定着できれば、盗塁王も決して夢ではない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)