サイヤング賞右腕を獲得
ワールドシリーズ制覇から10年…。フィラデルフィア・フィリーズが再び浮上のきっかけをつかもうとしている。
2007年から11年まで5年連続でナ・リーグ東地区を制するなど一時代を築いたフィリーズだったが、12年に勝率5割ちょうどに終わると、翌13年からは5年連続で負け越し。現在はまさに低迷期の真っただ中にある。
現在のロースターを見渡しても、投手・野手ともに20代の選手がほとんど。2~3年後に上位を狙う再建途上のチームになるとみられていた。ところが、今月12日にシカゴ・カブスからFAになっていたジェーク・アリエッタを獲得。3年前のサイヤング賞右腕が加入したことで、突如、無視できない存在となった。
サイヤング賞投手とはいえ、直近2年は15年に見せた投球に比べると物足りなかったことは事実。しかし、若手中心のフィリーズにおいて、2016年に世界一を経験しているアリエッタの存在がチームに好影響を与えることは必至。特に若い投手陣にとっていいお手本となるだろう。
FA戦士と期待の若手
野手では、同じくFAで加入したカルロス・サンタナが若手を引っ張る存在となりそうだ。
奇しくもアリエタと同じ1986年生まれで、クリーブランド・インディアンス時代の16年にはワールドシリーズでアリエタとも対戦した。シーズン25本塁打前後は計算でき、出塁率も高い一塁手。FAで加入した2人の活躍次第ではあるが、昨季(66勝96敗)よりも勝利数を上積みする可能性は高い。
サンタナとともに打線の中軸を任されるのが、昨年8月にメジャーデビューを果たしたばかりのリース・ホスキンス。僅か50試合の出場で18本塁打を記録した右打ちの長距離砲だ。
昨季の本塁打数を162試合で換算すると「58本塁打」となり、昨季メジャー最多本塁打をマークしたジャンカルロ・スタントン(ヤンキース)の59本塁打に匹敵する。ホスキンスは、自身初めてのフルシーズンでどこまでその数字を伸ばせるだろうか。
チームを率いる元NPB助っ人
さて、ここまでアリエタ、サンタナ、ホスキンスの3選手の名前を挙げたが、それ以外の選手となると、日本のファンにとって馴染みがある名前はほとんどない。ただし、今季から指揮を執る新監督は日本でプレーしたことがある元助っ人だ。
2005年に巨人に所属していたゲーブ・キャプラーを覚えているだろうか。日本では僅か38試合の出場で打率.153、3本塁打、6打点と期待を裏切り、オールスター前に帰国してしまった。
その後、2010年限りで現役を退くと、テレビ局の解説を務め、14年からはロサンゼルス・ドジャースの育成部門を担当。監督としての手腕は未知数だが、日本でもプレーした人物だけに注目したい存在だ。
ナ・リーグ東地区は今季もワシントン・ナショナルズの1強ムードだが、キャプラー新監督の下、フィリーズはダークホースとして旋風を巻き起こせるだろうか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)