安定感抜群の菅野
自身4度目の開幕投手に内定している巨人の菅野智之。オープン戦最後の登板となった23日の楽天戦で好調イーグルス打線を4イニング、無失点に抑え、順調ぶりをアピールした。
菅野は、オープン戦の防御率を1.29まで良化させ、今季はさらなる活躍に期待がかかる。昨季は先発投手として、勝率以外の多くの部門でリーグ1位に輝いた。ざっとその成績を挙げると次の通りだ。
【2017年菅野智之がセ・リーグ1位に輝いた記録】
・防御率 1.59
・完投数 6試合
・完封勝利 4試合
・無四球試合 3試合
この5部門以外に、勝率と奪三振数でリーグ2位につけている。オフには文句なしの「沢村賞」にも輝き、いまや球界の絶対的エースとして君臨していると言って異論を唱えるファンは少数だろう。
難易度が高い2年連続沢村賞
完投能力を備えた菅野には2年連続の「沢村賞」にも期待したいところだが、近年はこれが意外と高い壁となっている。最後に2年連続で沢村賞に輝いた投手は1995年と96年に同賞に選ばれた斎藤雅樹氏までさかのぼらないといけない。97年に斎藤氏が3年連続の偉業を逃して以降、20年以上にわたり、連続受賞者は生まれていない。
沢村賞に輝くような投手は完投数も多いため、前年の疲労が残っていたり、単に受賞イヤーが出来過ぎていたりの理由があるだろう。1997年の斎藤氏以降、2016年に受賞し、17年は6勝に終わった広島のジョンソンまでのべ21人が2年連続の受賞を逃している。
該当する21人の受賞年と翌年の成績を比較すると次のような事実がわかった。
・21人全員が受賞年に15勝以上挙げていたが、翌年8人が1桁勝利に落ち込み、前年の勝利数を上回った投手は2008年のダルビッシュ有と16年の前田健太(翌年はドジャースでの成績)の2人。15勝以上挙げたのも4人だけだった。
・21人の平均勝敗は受賞年の17.4勝5.7敗から翌年は10.7勝7.0敗に落ち込んだ。
・21人全員の防御率が翌年悪化。2年連続で防御率1点台を記録したのは2人だけだった。
これらの事実からわかることは、菅野が昨季に匹敵する成績を残すことは簡単ではないということだ。菅野は、過去3年だけで549回2/3(シーズン平均183回)を投げており、1年前のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でもチームで最も多いイニングを投げた。いくらタフネスさが自慢の菅野でも見えない“勤続疲労”はあるはずだ。
近年、沢村賞を受賞した翌年に同等の成績を残す投手がほとんどいないのは揺るぎない事実だろう。しかし、今の菅野ならあっさり「20勝」、「防御率1点台」をクリアしても何ら不思議ではない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)