9年総額230億円の大型契約も…
メジャーリーグのレギュラーシーズンも残り3週間半…。
大谷翔平を中心にリーグMVPやタイトル争いにも注目が集まる時期に差し掛かっているが、今回取り上げるのは2年前にナ・リーグのMVPを争っていた2人である。
1人目は、2019年のMVP投票で2位に入ったブリュワーズのクリスチャン・イエリチ。60試合に短縮された昨季を挟み、その落ち込みは激しい。
2018年にMVPに輝いたイエリチは、2019年も開幕から本塁打を量産。前年に惜しくも逃した三冠王も見据えるほどだったが、9月に自打球を当ててしまい骨折。そのままシーズンを終えている。
コロナ禍の昨季はシーズン前に9年総額230億円という大型契約を結び、ケガからの巻き返しを図ったが、打率は2割台前半と低迷。
完全復活を期した今季も、開幕から負傷者リスト(IL)入りを繰り返すこと3回。満身創痍のシーズンはここまでわずか8本塁打と、自慢の爆発力が完全に影を潜めたまま終盤を迎えた。
2年前のMVP男も苦戦中…
そんなイエリチ以上の不振にあえいでいるのが、2年前のMVP男であるドジャースのコディ・ベリンジャーだ。
イエリチと同じく、2年前は開幕から打棒が爆発。オールスターまでに球団記録となる30本塁打を放つと、後半戦も勢いは衰えることなく、自身初のMVPに輝いた。
昨季は4カ月遅れの7月下旬に開幕。調整に狂いが生じたのか、8月下旬まで打率1割台を低空飛行していたが、9月中旬以降になんとか帳尻を合わせてシーズンを終えた。ポストシーズンでは攻守で貢献。チームに32年ぶりの世界一をもたらしている。
迎えた今季は、2年前の再現を狙うシーズン。しかし、開幕戦のワンプレーがベリンジャーのリズムを崩してしまう。
シーズン初打席で四球を選び、迎えた第2打席。一塁に走者を置き、左翼に弾き返した当たりは左翼手のグラブに収まりかけたが、グラブからこぼれ落ち今季第1号…と思われた。
しかし、左翼手が捕球したと見誤った一塁走者のジャスティン・ターナーが、二塁を回ったところであわてて一塁に帰塁。本塁打を見届けたベリンジャーが一二塁間でターナーを追い越すという珍しい事態が発生してしまった。
もちろん本塁打は取り消され、記録は単打に。その後、第3打席で二塁打を放ち、開幕戦は4打数2安打と好発進。前年の不振を払拭したかに見えたが、この数日後の走塁中に相手投手と接触して負傷。1カ月半以上にわたって戦列を離れることになった。
故障が癒え、チームに合流したのは5月下旬のこと。ところが、なかなか本来の打撃を取り戻すことはできず、7月上旬からは打率1割台をさまよっている。9月に入ってからも23打数無安打で、浮上する兆しは全く見えていない。
2年前に激しいMVP争いを演じたイエリチとベリンジャー。合わせて91本を数えた本塁打は、今季わずか17本だ。
幸いどちらのチームもポストシーズン進出は確定的。残りのレギュラーシーズン、そしてポストシーズンで、2人は首脳陣の信頼を取り戻すことはできるだろうか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)
2人のここ3シーズン
▼ クリスチャン・イエリチ
2019年:130試 率.329 本44 点97
2020年:58試 率.205 本12 点22
2021年:98試 率.260 本8 点44(※現地9日現在)
▼ コディ・ベリンジャー
2019年:156試 率.305 本47 点115
2020年:56試 率.239 本12 点30
2021年:82試 率.158 本9 点33(※現地9日現在)