「高校1年生四天王」
大阪桐蔭の初優勝で幕を閉じた明治神宮大会・高校の部。その中で特に目立ったのが、1年生の活躍である。
大会前から高い注目を集めていた花巻東・佐々木麟太郎(一塁手)は、初戦の第1打席でいきなり本塁打を放つと、準決勝の広陵戦でも、一時同点に追いつく3ランを放ち、大物ぶりを見せつけた。
佐々木と同じく、1年生ながら4番を任されている広陵・真鍋慧(一塁手)と、九州国際大付・佐倉侠史朗(一塁手)も、今大会では揃って本塁打を記録。
また投手でも、大阪桐蔭・前田悠伍が圧巻のピッチングでチームの優勝に大きく貢献した。
過去を振り返っても、これほど1年生の活躍が目立つ大会は記憶にない。佐々木、真鍋、佐倉、前田の4人をまとめて“高校1年生四天王”と報道するスポーツ紙があったが、今年目立った1年生は彼らだけではない。
夏の甲子園では横浜・緒方蓮が魅せた
思い返してみると、今年の夏の甲子園でも大きなインパクトを残した1年生がいた。横浜・緒方蓮(遊撃手)だ。
抜群の守備力を買われ、入学直後から名門のショートを張った男。夏の神奈川大会ではトップバッターとして4割を超える打率を残すなど、バットでもチームに貢献した。
こうして迎えた夏の甲子園・初戦。好投手を擁する広島新庄を前に8回までゼロ行進を強いられ、9回の時点で0-2とビハインド。最終回に意地を見せて無死一・三塁のチャンスを作るも、二死となって万事休すか…と思われたところ、その状況をひと振りでひっくり返したのが緒方だった。
追い詰められた場面でも、1ボールからの2球目を迷わずにフルスイングしていくと、高々と舞い上がった打球はレフトスタンドに飛び込む起死回生の逆転サヨナラ3ラン。敗退の危機からチームを救った。
夏の時点では166センチと小柄な部類だが、決してプレーは小さくなく、スローイングにもスイングにも強さがあるのが持ち味。
この秋は部員の新型コロナウイルス感染によって県大会辞退という悔しい経験も味わったが、順調にいけばソフトバンク・今宮健太のようなタイプのショートストップに成長する可能性も秘めた選手である。
東海大相模・百崎蒼生が猛アピール
そんな横浜と同じ神奈川でしのぎを削るライバルである東海大相模にも、注目の1年生ショートがいる。今秋に一気に浮上してきた百崎蒼生(遊撃手)だ。
優勝を果たした春のセンバツで見事な守備を見せていた深谷謙志郎(2年)をサードに追いやり、ショートのレギュラーを獲得したのがこの選手。関東大会初戦の花咲徳栄戦で5打数5安打をマークすると、敗れた木更津総合戦でもプロ注目のエース・越井颯一郎(2年)から2安打を放つなど、存在感を見せつけている。
特筆すべきは、そのリストワークだ。速いストレートに少し差し込まれても、また逆に緩い変化球に体勢を崩されかけても、バットの芯付近でボールをとらえることができる。きれいなヒットだけでなく、いわゆる“汚いヒット”も打てることが、高い打率を残せる秘訣といえる。
守備に関してもフットワーク、スローイングともに1年生離れしたものがあり、まだ細身だが体の強さが感じられる。緒方と百崎の“出世争い”は、チームのライバル関係とともに、今後も大きな注目ポイントとなりそうだ。
東北・ハッブス大起は大型右腕
投手では、東北高のハッブス大起。そのスケールの大きさが際立っている。
入学直後からベンチ入りすると、夏の宮城大会では早くも最速140キロをマーク。秋の東北大会は初戦の山形中央戦で敗れたものの、リリーフで4回を投げて自責点0、3奪三振と好投を見せた。
最大の長所は、185センチの大型右腕ながら、フォームにギクシャクしたところがなく、スムーズに高い位置から腕を振り下ろすことができること。まだ下半身の強さは物足りないとはいえ、全体的なフォームのバランスの良さが目立つ。
順調に筋力がつければ、来春以降一気に球速がアップすることも期待できるだろう。
鹿児島城西・明瀬諒介と池野航太にも注目
最後に、投打両面で高いポテンシャルを感じさせたのが、鹿児島城西・明瀬諒介(一塁手兼投手)と池野航太(外野手兼投手)だ。
秋の九州大会では、初戦で優勝した九州国際大付に4-6で惜敗したものの、5番で出場した明瀬は2回に先制ソロを放ち、9回にはリリーフでマウンドにも上がり最速138キロをマークしている。まだ投打ともに粗削りだが、身長183センチ・体重95キロの堂々とした体格でスケールの大きさは十分だ。
池野は身長189センチ・体重85キロの大型打者で、九州国際大付戦では「3番・左翼」で出場。ヒットは出なかったが、打席での雰囲気は十分感じられた。また、投手としても既に140キロを超えるスピードをマークしているという。
この2人が強力な二枚看板と中軸を構成すれば、来年以降は九州でもトップクラスのチームとなることも期待できるだろう。
冒頭の明治神宮大会のところでも触れたが、秋の時点でこれだけ1年生が多く目に付く年は本当に珍しい。少し気の早い話だが、2023年のドラフトは高校生が大豊作となることも十分に期待できるだろう。
☆記事提供:プロアマ野球研究所