第3回:結果を直視しながら将来の理想像も追及
日本ハムの連勝が止まった!
開幕から5連敗、待望の初勝利を上げたのも束の間で再び4連敗。泥沼のスタートを切ったチームには「連敗が止まった」ことがニュースだったが、ここへ来てようやく戦う集団に生まれ変わりつつあるようだ。
20日の楽天戦は2-4の敗戦。16日から続いていた連勝は3でストップした。それでもBIG BOSSの表情に暗さはない。
「勝ちに等しい(敗戦)。俺の中では、これは素晴らしい」
指揮官が一定の手応えを感じたのは、最終回に見せた粘りだった。
楽天先発・岸孝之投手にゲームを支配されて8回まで散発3安打の零敗ムード。9回も二死まで追い詰められたところで、石井一成選手に二者を還す右中間三塁打が飛び出す。一打同点の場面に楽天ベンチは守護神の松井裕樹投手を送り出してクライマックスを迎えた。ネクストバッターズサークルには清宮幸太郎選手も待機していたが、今川優馬選手がそのまま打席に立ち、三振でゲームセット。
この場面、指揮官の狙いはこうだ。
「相手が右投手なら清宮君、左なら今川君と決めていた。結果は出なかったけれど、思い切り行ってくれればいい。ああいう場面で結果が出れば大きな自信となる」先々を見据えた用兵だったのだろう。
だが、最後の最後で追い上げムード、果たして、この試合でも前の打席まで3打数無安打、通算でも1割台前半の低率にあえぐ2年目の若手に託す場面だったのだろうか?
10人の監督がいたら9人までは代打を送っていただろう。
このゲームで野手の途中起用は一人だけ。ベンチには右の代打要員もいたはずでここは大勝負の場面だ。それでもBIG BOSSが今川にこだわったのなら、目先の勝利よりも大切な人材育成に目を向けたのである。
チームの手応えを結果へつなげられるか
4月に入って6勝8敗。(20日現在)一時期のどん底は脱した感がある。中でも監督を喜ばせているのが粘り強さだ。
10日の楽天戦と17日のロッテ戦はいずれも延長戦にもつれ込む接戦をモノにした。
とりわけ、ロッテ戦では佐々木朗希投手の前に8回までパーフェクトに抑えられながら、延長10回、万波中正選手の一振りで決着をつけた。わずか1安打で制したのは大きい。
そして、この2戦共に試合を作った上沢直之投手の存在が光る。今季、未だに未勝利のエースだが貢献度はさすがだ。
さらに上沢の上を行く活躍を見せているのが加藤貴之投手。19日の楽天戦では精密機械のコントロールを駆使してわずか90球の完封勝利。伊藤大海投手を加えた3枚エースが出揃い、ドラ8ルーキーの北山亘基投手がクローザーに定着すれば、ある程度の勝ち星も計算出来て来る。
打撃陣に目を転じれば、リーグトップ14本塁打の長打力が注目に値する。ちなみに昨年の20試合時点の本塁打数は8本。シーズンを通してもチーム本塁打78本はリーグワーストだったのだから、異変と言っていい。BIG BOSSが日頃から唱える思い切りのいい、積極打法が好結果をもたらしている要因なのだろう。
投手陣の整備が進み、攻撃陣の骨格も出来つつある。次の課題は戦力層の充実である。長丁場の戦いを見据えた時、固定メンバーで戦えれば理想だが、必ず二次戦力が必要となる。
これまで、指揮官はことあるごとに「二軍も含めた全員にチャンスがある」とチーム全体のモチベーションを高めることに腐心してきた。「目先の1勝にとらわれることなく」と将来へのビジョンも描いている。
現実の戦いを直視しながら、近未来の理想像も追及する。どんな監督でも避けて通れない道だが、チーム大改革中の日本ハムならなおさらだ。
BIG BOSSがつかみつつある手応えをどう結果として残していくか。新人監督の挑戦はこれからが本番となる。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)