5月連載:首位快走、それでも曲がり角に立つ巨人
長丁場のペナントレース、山もあれば谷もある。セリーグの首位を行く原巨人の場合はどうか?
開幕から4月までは20勝11敗。主砲の岡本和真選手は両リーグ一番乗りの10号本塁打を記録、大勢や赤星優志らの新人投手が予想以上の働きを見せ、グレゴリー・ポランコとアダム・ウォーカーの両外国人野手も昨年の助っ人より働きそうだ。一方で、ここへ来て菅野智之、坂本勇人選手と言ったチームの顔が故障による戦線離脱で不安材料も覗き出した。
今季の大目標である「育成と勝利」を両立させられなければ、2年ぶりのペナント奪還もおぼつかない。まだまだ、盤石とは言えない原巨人の問題点と今後の戦いの鍵を検証していく。
第1回:大黒柱2人の離脱で正念場を迎える巨人
世の中がゴールデンウィークに沸き、満員のスタンドに活気が戻ってきた。
だが、巨人にとっては「魔の1週間」と言っていいほどアクシデントが続いている。
4月29日の阪神戦(東京ドーム)に先発した菅野智之投手が3回2失点で緊急降板。球威もコントロールも精彩を欠いた理由は右肘の違和感、翌日には一軍登録を抹消された。
エースがグラウンドから姿を消した同じ30日の同カードでは坂本勇人選手が守備の際に右脚をひねり、診察の結果は右膝内側側副靱帯の損傷で翌5月1日には抹消。
これだけでは終わらない。5月4日の広島戦(マツダスタジアム)では吉川尚輝選手が右肩甲骨付近に死球を受けて、担架で運び出された。翌5日の先発メンバーから外れている。
菅野と坂本が巨人の看板を背負う“飛車角”なら、一番打者として成長著しい吉川は“金銀”クラスの選手だ。原辰徳監督にとっても、いきなり正念場がやってきた思いだろう。
死球の吉川はともかく、菅野と坂本の戦線離脱は、今後に向けて何とも気がかりだ。チームの生命線を握る大黒柱であり、近年、故障が頻発しているからである。
菅野の異変は昨年から続いている。過去に最多勝や沢村賞など投手タイトルを総なめしてきた大エースが昨年は、右肘の違和感などで4度の登録抹消を経験した。150キロ超のストレートは影を潜め、コントロールにもバラつきが目立つため、伝家の宝刀であるスライダーまで見極められる。昨年は6勝止まりの自己ワースト。32歳と言う年齢はまだベテランに差し掛かったところだが、2年連続で浮上のきっかけを見出せないようだと、投手陣全体に与える影響はとてつもなく大きい。
同じことは坂本にも言える。今季は開幕直前に左わき腹に痛みを訴えてリタイア。それでも、すぐに戦列に戻ってくると元気な姿を見せていたが、1カ月で2度の故障は選手生命の岐路に立たされていると言う指摘もあながち、的外れではない。
過去の名ショートを見ても宮本慎也(ヤクルト)、鳥谷敬(ロッテ)らは晩年、遊撃から三塁へのコンバートを余儀なくされている。守備範囲が広く、強肩も要求される遊撃のポジションは激務で勤続疲労がたまりやすい。彼らに比べて33歳の坂本は年齢こそ若いが、高卒2年目からレギュラーを張って、すでに2000試合近く出場を続けている。近年は腰痛の爆弾を抱え、昨年は右手親指の骨折もしている。今回の故障個所である右膝は、守備でも打撃でも影響を受けやすい。今後は首脳陣も今まで以上に坂本の起用法を慎重に見極める必要が出てきそうだ。
スポーツ専門誌ナンバー・ウェブ版のインタビューに原辰徳監督は坂本についてこう語っている。
「彼だって年齢的にはどうやって現状維持するか、ともすると肉体的には下降線に入ってもおかしくない」。そのうえでLINEのやり取りでは、選手生命を考えて禁煙の勧めを行ったことを明かしている。
昨年の敗戦を反省して新たなチーム作りを指揮官は決意した。そのバックボーンとなるのが「育成と勝利」である。世代交代を進めながら勝利を勝ち取るには、もちろん既存戦力、とりわけ菅野や坂本と言った看板選手の復活が必要不可欠なのは言うまでもない。
順調に白星を積み上げてきたが“黄金週間”に入って今季初の4連敗。王者に意外と早く正念場が訪れようとしている。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)