9回2失点の好投見せるも、9回2アウトから痛恨の被弾
6月28日に行われたレッドソックス戦。ヤンキースの田中将大は9回2失点7安打1四球8三振と、しっかりとゲームを作り、デビューから16試合連続となるクオリティスタート(6イニング以上を自責3点以下)をクリアしたが、打線の援護に恵まれず1対2で敗れた。
打たれた場面が悪かった。田中自身が、「最悪の結果になってしまった」と振り返るとおり、絶対に打たれてはいけない場面でホームランを打たれ、メジャー初の連敗を喫した。
同点で迎えた9回表2アウト、カウント1-2から5番ナポリに真ん中高めのストレートをライトスタンド最前列へ運ばれ、痛恨の決勝アーチ。キャッチャーのサインに首を振り、自ら選んだストレートが甘く入ってしまった。メジャー最速タイの154キロを記録していたが、コースが甘くなれば、ホームランのリスクが高まる。ライトが狭いヤンキースの本拠地ということも、田中にとっては不運だった。
「ボールを1球、速い球を見せてからそれから(変化球)でもいい」
「スプリット、スライダーがナポリに対していい結果を出していたけど、すぐバカ正直にいってもいいものなのかなと。一番打てる高さに行ってしまった」
ここまで、スプリットにまったく合っていなかったナポリ。それだけに悔やまれる、コントロールミスだった。
5試合連続の被本塁打 気になる被本塁打率の悪化
ちょっと気になる数字がある。
日本時代と比べると、被本塁打の本数が明らかに増えているのだ。この日のレッドソックス戦でも被本塁打2。これで、5試合連続の被弾となる。パワーヒッターが並ぶメジャーリーグであるからこそ、多少、本塁打が増えるのは仕方のないこと。ただ、メジャーの一流投手と比べてしまうと、田中の被本塁打は多い。
昨年の田中は212イニングで被本塁打わずかに6。被本塁打率にすると、0.25だ(9イニング投げた場合、ホームランを何本打たれるかの目安となる)。2012年は0.2、2011年は0.32と、低反発球の恩恵もあっただろうが、低い数字を残していた。もっとも、打たれていたのがルーキーイヤーの2007年で、被本塁打率0.82であった。
それが、メジャーデビューの今年はレッドソックス戦を終えて、115回2/3で被本塁打13、被本塁打率1.01と高い。
現在、ア・リーグの防御率20傑を見てみると、1.0を超えているのは田中を含めて4人のみ。メジャーを代表する投手と比べてしまうと、田中はホームランを打たれやすい投手ということになる。日本での印象とはガラリと変わっている。
とくに打たれているのがカウント球のフォーシームとスライダー。13本のホームランのうち、追い込んでからのホームランは2本のみだ。
ちなみに、ほかの日本人投手はどうかというと、
ダルビッシュ有 2011年=0.19 → 2012年=0.66
黒田博樹 2007年=1.00 → 2008年=0.64
岩隈久志 2011年=0.51 → 2012年=1.31
松坂大輔 2006年=0.63 → 2007年=1.10
(左が日本最終年、右がメジャー1年目)
黒田を除くと、被本塁打率が高くなっている。
ただ、ホームランを打たれながらも、田中のすごさを感じるのは13本のホームランのうち、11本がソロということ。走者を置いてのホームランは2本しかない。メジャーにおいても、走者がいる場面ではしっかりとギアチェンジができている証だろう。
レッドソックス戦での「最悪の結果」を、これからどのように生かしていくか。今後さらに被本塁打率が悪化するようなことがあると、これまでのように勝ち星を重ねるのは難しくなるかもしれない(数字は7月1日現在)。
文=大利実(おおとし・みのる)