数々の記録を打ち立てたヒットメーカー 打席数に占める三振数が増えている
シーズン最多安打や10年連続200安打、日米通算4000本安打など、数々の記録を打ち立ててきたニューヨーク・ヤンキースのイチロー。そんな彼も、昨年、「不惑」を迎え、今年10月には41歳を迎える。
今季のイチローはここまで88試合に出場して、223打数62安打、打率.278。打線が低調なヤンキースの中で見れば、まったく悪い数字ではない。40歳を過ぎてもなお、ヤンキースのレギュラーとして試合に出続けていることが、徹底した体調管理、コンディショニング作りに取り組む、イチローのすごさを表しているだろう。
しかし、細かい数字を追っていくと……気になる数字が存在する。三振数が激増しているのだ。
イチローといえば、1997年に216打席連続無三振のNPB記録を作るなど、三振の少ないバッターとして知られている。ストライクゾーンを外れた球でも、持ち前のバットコントロールでコンタクトしてきたのだ。
そのイチローが、ここまで(現地時間7月24日現在)42三振。7月22日のレンジャーズ戦では、第一打席、インコースのフォーシームに対応できず、中途半端なハーフスイングで空振り三振を喫してしまった。
打席数を三振数で割ってみると、およそ何打席に1度の割合で三振しているかを調べることができるが、まずは1992年から2000年までの日本時代の成績を見てみると、
・1992年 8.64
・1993年 9.14
・1994年 10.30(リーグ最多210安打、首位打者)
・1995年 10.07(首位打者)
・1996年 9.51(首位打者)
・1997年 14.89(首位打者)
・1998年 14.46(首位打者)
・1999年 8.93(首位打者)
・2000年 10.97(首位打者)
平均すると、10.87打席に1度、三振を喫していたことになる。
今季は約5打席に1度の三振 バッティングを変えているのか?
この数字はメジャーに行ってもほぼ変わっていない。
・2001年 13.06(242安打)
・2002年 10.44
・2003年 9.84
・2004年 11.17(メジャー最多262安打)
・2005年 10.29
・2006年 9.79
・2007年 8.81
・2008年 10.55
・2009年 9.00
・2010年 7.91
・2011年 9.81(10年連続200安打が途切れる)
・2012年 10.31
・2013年 8.25(メジャーでのキャリア最少57安打)
メジャーでの平均は9.82打席に1度の三振率となる。
そして、肝心なのは今年の数字だ。
223打数で42三振。5.31打席に1度の割合で三振していることになる。キャリアのなかで、ここまで高い頻度で三振を喫している年はない。
この数字をどう読み取ればいいのだろうか?
バッティングスタイルを変えたのか、あるいはバットコントロールに狂いが生じているのか。スイングした際のコンタクト率(バットとボールが当たった率)を調べると、昨年よりもおよそ4パーセント落ちているというデータもある。
全打席を見ているわけではないが、ボールになる低めの変化球を空振りしている印象が強い。もともと、ボール球を見極めるタイプではないので、スイングしていることに関しては例年と変わっていないように感じる。
今年に入ってのイチローの三振の多さは、アメリカでも話題になりつつあるところ。年齢が年齢だけに、「衰え」に結び付ける人も増えてくるだろう。
今後、三振率がどのように推移していくか、さらに、注目して見ていきたいところである。
文=大利実(おおとし・みのる)