“プロフェッショナル・ベースボール”での最多安打
マイアミ・マーリンズのイチローが現地時間6月15日、敵地でのサンディエゴ・パドレス戦で2安打を放ち、ピート・ローズの持つメジャー歴代最多4256安打を更新する日米通算4257安打(日本1278、米国2979)という大記録を達成した。
「メジャー歴代最多を更新する日米通算」と妙な言い回しになったが、日米通算という記録の括り方については賛否ある。たしかに、プロ野球は日本とアメリカ以外にも韓国や台湾、オーストラリア、ヨーロッパなどにもあり、「なぜ日本とアメリカだけなのか」という言い分もわかる。
わたしの中では、2013年8月にイチローが日米通算4000安打を達成したとき、アメリカの実況アナウンサーが言った「“プロフェッショナル・ベースボール”で4000安打」という言い方がもっともしっくりくる。その視点では、イチローは“プロフェッショナル・ベースボール”の歴史上、もっとも多くの安打を記録したと言えるのではないだろうか。
そもそも、“日米通算”という括り方がはじまったのはイチローがメジャーでプレーしているからであり、そのような括り方が出てくるほどイチローは結果を残してきた。
ジョージ・シスラーのシーズン安打記録や、ウィリー・キーラーのシーズン単打記録など、イチローは日本であまり知られていなかったメジャーの大記録を更新してきた。そういった記録を掘り起こし、“日米通算”という新たな記録の見方が出てくるほどの活躍をイチローは見せてきたのだ。
日米を巻き込んだ論争が巻き起こるほどの結果を残してきたイチロー。その凄さを改めて感じる。
引っ張れなかった昨季から一変したイチローの打撃
今季の開幕前、イチローの最多安打やMLB通算3000安打といった記録に注目が集まる反面、衰えを指摘する声も少なくなかった。
昨季は153試合の出場で91安打、打率.229と信じられない成績に終わったこともあり、「イチローも衰えた」と言われても仕方がなかっただろう。ところが、今季は6月21日現在で58試合に出場し45安打、打率は.349。129打数で三振はたったの7と、まさに“イチロー健在”を印象付けている。
打率や三振数以外にも、イチローの復調を表す数字がある。
アメリカの野球データサイト「fangraphs」によれば、昨季の「引っ張った打球の割合」は全体の28.1%だったが、今季は29.3%まで上昇している。
また、打球の強さでは昨季は弱い当たりが26.1%、中間の当たりが60.4%、強い当たりが13.5%だった。それが今季は、弱い当たりが28.5%と上がっているものの、中間の当たりは48.0%まで減り、強い当たりは23.6%まで上がっている。
打球の強弱は客観的評価に過ぎないが、昨季の夏場あたりのイチローバットに当てるのが精一杯で、なかなか引っ張れていないように見えた。しかし、今季は強く引っ張っている当たりが増えている。これまでイチローのプレーには数えきれないほど驚かされたが、40歳を過ぎてもなお復調する姿にはただただ驚くばかりだ。イチローが言う「50歳まで現役」ということも、夢物語ではない気がする。
今季は安打だけでなく、メジャー通算500盗塁を達成したイチロー。通算3000安打まであと20本まで迫り、同一シーズンでの500盗塁&3000安打達成となれば史上初の快挙となる。
イチローは一体どこまでわたしたちを驚かせてくれるのだろうか。
文=京都純典(みやこ・すみのり)