コラム 2016.06.21. 13:45

プロ初本塁打直後に進塁打放ったオコエの凄さ

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3回楽天無死、オコエが左中間にプロ初本塁打を放つ=横浜 (C)KYODO NEWS IMAGES

課題の内角直球を完璧にとらえたプロ初アーチ


 楽天のドラ1ルーキー・オコエ瑠偉に待望のプロ初本塁打が生まれた。6月18日のDeNA戦。1点リードで迎えた3回表、相手投手は活躍を続けるルーキー・今永昇太。その初球のストレートをフルスイングすると、高々と舞い上がった打球はレフトスタンド中段へと吸い込まれた。

 本人も「入るとわかった」と振り返る、まさに、“打った瞬間”という当たりを見送りながら、二度三度と咆哮してダイヤモンドを一周。ベンチに戻ると、先輩たちの手洗い祝福を受けた。

 その喜びぶりには理由があった。もちろん、プロ初本塁打なのだから喜んで当然だが、とらえたボールが、プロ入り以降、課題とされてきた内角のストレートだったからだ。2日前の巨人戦前に、坂本勇人から内角打ちのアドバイスを受けたばかり。それをすぐさま実践してみせた。“スポンジのように”とは使い古された言葉だが、オコエの吸収力はハンパじゃない。


色気を見せず進塁打を放つ冷静さと自己犠牲の精神


 この日、目を見張る打席がもうひとつあった。それは、初本塁打を放った次の打席だ。4回表、楽天の投手・釜田佳直がタイムリー二塁打を放ち、なおも無死二塁という場面。ファーストストライクは、2打席連続本塁打を狙っているかのようなフルスイングでファール。初ホームランを打って気分も乗っているだろう。「あわよくばもう1本……」、そんな色気が出て当然である。

 ところが、2ストライクに追い込まれると、オコエの打撃は一変する。カウント2-2からチェンジアップにバットを合わせ、見事に二塁走者を三塁へ進める進塁打を記録。その後、藤田一也の犠飛により三塁走者が生還。チームバッティングで貴重な追加点のお膳立てをしてみせた。

 開幕直後、4月3日の西武戦だった。プロ初のスタメン出場を果たしたオコエだったが、3打数無安打で迎えた8回裏、無死一塁の場面で途中交代を告げられた。代打に送られたのはバントが得意な福田将儀だ。3回裏、無死一、二塁の好機で、オコエは二飛に倒れていた。「打てなかったことより(代打を送られたことが)悔しい」。試合後のオコエは唇をかみ締め、自身の技術不足を痛感した。

 その経験を糧に、冷静に状況を判断し放ってみせた進塁打。ベンチではウィーラーらが本人以上にはしゃいでルーキーを出迎え、その成長をたたえていた。プロ野球選手として生きていくために必要な技術を貪欲に求め、次々と身に付けていくオコエ。次に我々を驚かせるプレーはどんなものだろうか。


文=清家茂樹(せいけ・しげき)

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