コラム 2016.06.20. 20:00

【白球つれづれ】13年目のシンデレラストーリー

無断転載禁止
6月19日の阪神戦、5回ソフトバンク2死、城所が右越えに満塁本塁打を放つ。投手岩貞=甲子園(C)KYODO NEWS IMAGES

「白球つれづれ」~第13回・城所龍磨~


 強い。強すぎる。最近、野球好きの人々の会話はソフトバンクホークスの無敵の進撃に始まり、やがてため息が漏れてくる。

 今年のセ・パ交流戦も戦前の下馬評通りに白星を積み上げて13勝4敗1分。2年連続の最高勝率球団(要は優勝のこと)に輝いた。ちなみに過去10年の交流戦における1位を調べてみると、巨人が2度、日本ハムとオリックスが各1度、それ以外の6度がソフトバンクなのだから、その強さは群を抜いている。

交流戦のMVPは…!?


 シーズン半ばの交流戦で、セ・リーグの各球団は白旗状態。パ・リーグに目を転じてみると、ロッテが必死に貯金を作っても、さらにその上を行く。これではペナントレースの興味は薄れ、後半戦の観客動員にも影響が?と余計な心配をしたくなるがそうとばかりは言えない。個人的に何とも痛快で夢のような物語を現実にしている男がいる。近日中に発表される交流戦MVPの大本命と目されている城所龍磨。プロ13年目の狂い咲き?こんなドラマもあるから野球は面白い。

 2003年のドラフトで当時の福岡ダイエーホークスから2位指名。昨年までの通算成績は589試合に出場して290打数48安打。打率.166、1本塁打、21打点。ちなみに今季の年俸は推定1900万円。1億円プレーヤーがゴロゴロいるチームにあって解雇されてもおかしくない数字だが、人並み外れた身体能力に裏打ちされた守備、走塁のスペシャリストとして生きる場を見出してきた。

 入団当初の監督で現球団会長の王貞治に城所の印象を聞いてみた。 
 
「攻守走と揃っていて3~4年目には柴原と外野のレギュラーを争うところまで来ていたんだ。ところが肝心なところでケガが多くてね」


ケガと若手の台頭と


 確かに入団2年目の二軍戦で左側頭部に死球を受けての骨折を皮切りに、その後も肩、ふくらはぎ痛などで戦列離脱を繰り返してきた。昨年はオープン戦で左尺骨骨折、ようやく一軍に呼ばれた8月の西武戦でも左肩脱臼で再びリタイア。公式戦の出場はわずかこの1試合に終わってしまった。気がつけば外野には、柳田、長谷川、中村らが台頭。レギュラーの座をつかみ、福田、江川ら控えの層も厚い。城所にとって背水の陣で臨んだ今季だった。

 シーズン当初はいつもの通り守備、代走要員としてスタートした。それでも人一倍、練習する姿が首脳陣の目にとまる。5月に入って先発起用されると結果を出していった。そして、交流戦の大ブレークだ。巨人戦では高木勇人から2打席連続本塁打を放つと、最終戦となった19日の阪神戦では満塁弾で試合を決めた。
過去の12年間でたった1本塁打の男が交流戦だけで5ホーマーに12打点。打率.415は堂々のトップだ。

 「今は打席でゆったり出来ている」という城所自身も夢心地に違いない。


転機


 心の変化は昨年1月にさかのぼる。かつての僚友・川崎宗則(現シカゴカブス)の紹介でイチローと自主トレを共にする機会を得た。そのイチローから文字通り血ヘドを吐く猛ノックを受けて妥協のないプロの魂を感じた。肉体の変化は自らの弱点だった故障しやすい体質からの脱却。体脂肪率7%の研ぎ澄まされた体は「切れすぎる」が故にケガと背中合わせだったが、パワーを残したまましなやかさを身に着けるウェートトレの改善で新たな鎧に身をまとった。

 そのイチローが「キドコロ待機中」のTシャツを着て報道陣の前に現れたのは昨春のフロリダキャンプでのこと。彼なりの激励だったに違いない。それから1年後「待機中」は「確変中」に変わり守備要員は大変身を遂げつつある。それでも師匠の王会長はこう付け加えることを忘れなかった。

「無事これ名馬というだろう。何事も長く続けることが重要なんだ」

 プロ13年目のシンデレラストーリーはまだ始まったばかりだ。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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