由伸ジャイアンツの決断
開幕から約2カ月――。43試合の出場で151打数34安打、打率にして.225。本塁打は7、打点21。出塁率.324に、長打率が.411。巨人の新助っ人、ギャレット・ジョーンズが残した数字である。
メジャー通算122発の看板を引っさげ、鳴り物入りでやってきた左の大砲。近年特に苦しんだ“貧打解消”に向けた起爆剤として大きな期待がかかった男は、開幕から2カ月もたずに上記の数字を残して二軍に降格した。
開幕から4番に座り、3月27日から30日にかけては3試合連続で本塁打も記録。開幕10試合時点では打率.306、4本塁打、10打点という好スタートを切ったが、その後の成績は下降の一途を辿る。
5月20日の中日戦では初めて4番を外れ、6番で先発出場。2安打を放ち、翌21日の試合でも2打数1安打と気を吐いたが、22日の試合では6回の守備で1イニング2失策。決定的な3点を奪われ、打っても4打数無安打の3三振と精彩を欠き、ついに二軍落ちが決まった。
今シーズンから指揮を執る高橋由伸新監督にとっては、自らが据えた初めての4番打者。周囲から不安の声が大きくなる中でも信じて助っ人を起用し続けてきたが、いよいよガマンの限界に達したという格好だ。
ギャレットの代役候補・大本命は...
中日との3連戦に負け越した巨人は、首位から陥落した。
とはいえ0.5ゲーム差の2位ではあるのだが、うしろを振り向けば中日が0.5ゲーム差で迫ってきており、最下位のヤクルトまでも4ゲームしかない。このままずるずると下がっていけば、一気に底まで転がり落ちる可能性だって大いにあるのだ。
チーム打率.246(リーグ5位)、得点146(同最下位)と今年も貧打に喘ぐチームは、ここからどう立て直していくのか。カギを握るのが、ギャレットを外したことで空く「一塁」の起用法である。
一部報道では、ギャレットと同じ左打ちの助っ人であるレスリー・アンダーソンの昇格が伝えられている。来日1年目の2014年には、87試合の出場ながら打率.316で15本塁打をマーク。その打棒は証明済みだ。
昨年はケガにも苦しめられ、83試合の出場で打率.252、7本塁打と数字を落としたが、今春のキャンプ中に手術を行い、不安要素を排除。5月22日の二軍戦(フューチャーズ戦)で実戦復帰すると、その試合で復帰第1号となる一発を放った。
そのフューチャーズ戦では一塁の守備にも入り、仕上がりぶりをアピール。早くもギャレットに取って代わる存在として期待されている。
育てながら勝つ!
また、未来の主砲の台頭に期待するというのも、ひとつの打開策かもしれない。現在ファームで好調を維持している高卒2年目・岡本和真である。
今シーズンはキャンプから一軍に帯同してオープン戦を戦うも、開幕一軍入りはならず。悔しいスタートとなった2016年だが、ファームで37試合に出場し、打率.278、7本塁打で42打点を記録。本塁打はリーグトップタイ、打点はトップ独走と快進撃を見せている。
一軍の三塁には好調を維持している村田修一がいるが、「一塁」が空いたとなれば、村田を一塁に移すことも可能。将来の球団を担うであろう大砲に早いうちから一軍で経験を積ませられるということは、未来のチームにとっても大きなプラスとなるに違いない。
思い切った若手の抜擢はあるのか。指揮官の決断に注目が集まる。
大黒柱の存在感
最後にもう一人、帰ってくる左のスラッガーといえばこの人も忘れてはならない。巨人の大黒柱・阿部慎之助だ。
コンディション不良により開幕から二軍調整を続けてきた阿部も、まもなくファームの試合で実戦復帰すると見られており、ファンの期待も日に日に高まっている。
もちろん一軍復帰が可能かどうかは依然として不透明であり、ここ数年の成績から過度な期待を寄せるのは酷なのかもしれない。それでも、これまでの実績を考えた時、阿部と楽に対戦ができる投手などいないだろう。ラインナップに名前が載っているだけで、もっと言えばベンチにいるだけでも相手に与える影響は計り知れないものがある。
困ったときのベテラン頼み。大黒柱に窮地を託すという選択肢も大いに考えうることだろう。
もちろん、これがすべてではなく、層の厚いチームだけに様々な可能性が考えられる。果たして、就任1年目の高橋由伸監督の決断は…。ギャレットがいなくなって空きとなる、巨人の「一塁」の起用法に注目していきたい。