輝かしき時代
80年代の後半から90年代前半にかけて“黄金時代”を築いた西武。圧倒的な強さで他球団から恐れられたチームであるが、今ではその強さは影を潜め、08年を最後に8年間もリーグ優勝から遠ざかっている。
今季もここまでリーグ4位と低迷。首位を走るソフトバンクには11ゲームの差をつけられ、まずはクライマックスシリーズの出場圏内を目指すという戦いが続いている。
西武はいつから「Aクラス」を争うようなチームになってしまったのだろうか…。
82年から4年間指揮を執った広岡達朗監督は、チームを3度のリーグ優勝に導いた。森祗晶監督がそのバトンを引き継ぐと、就任9年間で8度のリーグ優勝、6度の日本一と黄金時代を築く。
投手陣は東尾修をはじめ、工藤公康、渡辺久信、石井丈裕、潮崎哲也、鹿取義隆といった面々。野手陣も清原和博、秋山幸二、石毛宏典、辻発彦、デストラーデ、田辺徳雄、伊東勤というメンバーがスタメンに名を連ねていた。
森監督退任後は、東尾修(95年~01年)、伊原春樹(02年~03年)、伊東勤(04年~07年)、渡辺久信(08年~13年)と監督のバトンが渡されていった。この19年間、実に5度のリーグ優勝を達成し、Bクラスはわずかに2回しか経験していない。
2年連続のBクラスから
しかし、近年はというと、苦しい戦いが続いている。
2014年にリーグ5位に終わると、15年は4位。球団名を西武に変更して以降では、80~81年以来となる2年連続のBクラスに沈んだ。
現在の西武はというと、秋山翔吾、栗山巧、メヒア、中村剛也、浅村栄斗といった強打者が上位陣に名を連ねる。その一方で、やや淡白に見えるバッティングや軽率な守備も目につくようになったが、リーグトップの本塁打数とチーム打率が他球団にとっての脅威であることは間違いない。あとは投手陣が整備されれば、優勝を争う力は十分にあるはずだ。
今季は牧田和久を後ろに回したこともあり、近年の課題だったリリーフ陣は比較的安定している。ここから巻き返しを図るには、復帰が間近に迫っている岸孝之や勝ち頭の菊池雄星に続く“柱となれるピッチャー”が必要になるだろう。そして、十亀剣や野上亮磨が思うような結果を残せていないいま、その候補として思い浮かぶのが、高卒2年目の高橋光成だ。
次代を担う高卒右腕
現在のエース・岸孝之や、長らくチームを支えてきた西口文也は大卒だが、工藤公康、渡辺久信、松坂大輔、涌井秀章と、西武のエースは代々高卒の投手が多い。高橋光も、その系譜の一人となる可能性を秘めている。
2013年に前橋育英高校を甲子園初出場・初優勝に導いた甲子園優勝投手は、14年のドラフト1位で西武に入団。1年目からデビューを果たし、8月9日のオリックス戦でプロ初勝利を挙げると、同月は5試合に登板し4勝(1敗)をマーク。18歳6カ月の史上最年少で、8月の月間MVPに輝いた。9月は1勝にとどまったが、最終的に5勝2敗、防御率3.07の成績を残し、1年目を終えている。
2年目の今季、開幕ローテーション入りこそ逃すも、4月30日に一軍昇格。5月19日のロッテ戦で、6回を1失点に抑え今季初勝利を挙げると、26日の楽天戦では、プロ入り2度目の完封勝利を記録した。ここまで5試合に登板して、2勝1敗、防御率2.25の成績を残している。
今季は、岸の離脱や十亀、バンヘッケンの不調で駒不足となった先発事情もあったが、その中でしっかりとチャンスをつかみつつある。そして、高橋光に加え、佐藤勇、多和田真三郎といった同年代の若手投手の台頭により、チームは復調の兆しを見せている。
佐藤と多和田は制球面に課題を残し、現状は5回がやっといった試合が続いているが、苦しみながらも貴重な経験を積んでいる。その中でも頭一つ抜けている高橋光が独り立ちし、完封勝利を収めた楽天戦のようなピッチングを続けることができれば、今後の戦いの中で上位に進出し、かつてのような強いチームの礎を築くこともできるはずだ。
まずは先発する2日のDeNA戦で、チームに勝利をもたらすようなピッチングに期待したい。