夢舞台の大役を掴んだ苦労人
プロ野球も13日を持って、いわゆる前半戦の戦いが終了。いよいよ年に一度のお祭り「オールスターウィーク」を迎える。
15日から始まる「マツダオールスターゲーム2016」に先駆けて、今日14日に開催されるのが「フレッシュオールスターゲーム」。球界の明日を担う若手たちによる一夜限りのドリームマッチが、岡山県・倉敷マスカットスタジアムにて行われる。
13日には、若手選手たちの晴れ舞台となるこの一戦のスターティングラインナップが発表。オコエ瑠偉(楽天)や平沢大河(ロッテ)、さらにウエスタンの先発投手の大役を務める高橋純平(ソフトバンク)と、昨年のドラフトを盛り上げた“高卒ドラ1”たちに注目が集まる中、イースタンの先発を務めることになったのは、チーム最年長の25歳・長谷川潤であった。
1991年6月25日生まれの25歳。同学年では筒香嘉智(DeNA)や菊池雄星(西武)、今宮健太(ソフトバンク)といった選手たちがすでにチームの主力として活躍している。
成立学園高から金沢学院大を経て、BCリーグ・石川に入団。主戦投手として2年間活躍した後、昨年9月に巨人のテストを受験して合格。それからほどなくして行われたドラフト会議で育成の8巡目、全体116番目という“最下位指名”でNPBの門を叩いた。
“最下位指名”から197日で一軍デビュー
念願のNPB入りこそ果たしたものの、与えられた背番号は「022」。三軍からのスタートだった。
それでも右腕はキャンプ、オープン戦と結果を残していくと、すぐに二軍へと昇格。さらに開幕直前にチームを襲った“野球賭博問題”で投手の枠が空いたことも重なり、開幕直後の3月28日には支配下登録を勝ち取った。
ファームではリリーフからのスタートも、先発に転向した4月は4試合すべてでクオリティースタート(※6回を投げて自責3以下)をクリアするなど、安定した投球を披露。すると、大型連休の連戦で先発枠が空いた一軍からお呼びがかかる。
育成入団から1年目での初登板・初先発というのは、プロ野球史上初の快挙。秋のドラフト会議で最後に名前を呼ばれた男は、キャンプからわずか3カ月で三軍から一軍まで駆け上がった。
結果的には4回と2/3を投げて4失点。初登板は黒星に終わったものの、長谷川の勇姿は独立リーガーやNPBの三軍、育成選手たちに大きな希望を与えた。
“3球団競合1位”と“116番目の男”が激突!
デビュー翌日に登録抹消となって以降、一軍のマウンドからは遠ざかっている右腕。それでもファームでは18試合で5勝5敗、防御率3.08と首位チームのローテーションの一角を守っている。
そして託された、フレッシュオールスターの先発マウンド。2015年ドラフト“最後の男”が、若手たちの登竜門・一夜限りのスペシャルマッチで大役を務める。しかも、投げ合う相手は同じドラフト会議で3球団が競合した1位・高橋純平だ。
あのドラフトから9カ月……。高校No.1投手と呼ばれた当時の目玉と、独立リーガーだった“全体116番目”の男が激突する。こんなにおもしろく、夢のある話はなかなかないだろう。
巨人・長谷川潤が挑む夢舞台の開演は18時――。男の勇姿を見逃すな。