飛躍が期待されたシーズンも…
「去年、こうやれば上手くいくというのがだいぶわかってきた。今年はそれを分かっているんですけど、できない。自分との葛藤があった。苦しいシーズンでした」。
10月5日のシーズン最終戦を前にロッテの清田育宏は、今シーズンをこのように振り返った。その後行われたクライマックスシリーズでは、CS史上初となる2試合連続初回先頭打者本塁打を放ったが、打率.317を記録した昨季に比べると、かなり物足りない成績に終わった。
今年は昨季の活躍が認められ、3月に行われたチャイニーズタイペイとの強化試合で、初の日本代表に選出。オープン戦も打率.417、1本塁打、7打点を記録するなど、順調そのものだった。
今季は更なる活躍が期待されたが、上手くいかない。シーズンが開幕してから、思うような打撃が披露できず、昨季は5月終了時点で.363を記録していた打率も、今季は打率.230(5月終了時点)と低迷。4番のデスパイネ、5番の角中勝也が打撃好調だったこともあり、3番清田の不振が目立った。
こうした状況を打破すべく、5月31日には「調子が悪いというか、技術がない」と広島戦の前にQVCマリン(当時)で行われたヤクルトとの二軍戦に志願して出場。「(親子ゲーム)その日の夜の試合から今までと違う感覚があって、次の日のバッティング練習で今までにないいい感じで打てていた。監督が打てなくても我慢して使ってくださっていますし、それに応えないといけない」と6月2日の広島戦で1本塁打を含む3安打2打点の大暴れ。
この試合をきっかけに状態が上向くかと思われたが、6月の月間打率は.205(78-16)。7月に入っても状態は変わらず。7月13日に二軍落ちとなった。
二軍で若手と汗を流した1カ月
二軍に落ちた清田だが、「バッティングの調子が上がってこなかったので、もう一度最初からやり直して、ランニング、バットを振って、いつ呼ばれてもいいように準備をしている」と腐ることなくバットを振り続けた。
ある日の試合では、試合前に池田重喜寮長兼打撃投手(当時)が投げるボールを黙々と打ち返し、試合後には約2時間近く外野でスローイングとランニングを行った。
さらに試合後のトレーニングが終わった後、待っていた100人以上のファンに対して、一人ひとり丁寧にサイン。「時間が経っても(ファンが)待ってくれるので、できる時間があれば、ファンサービスをしっかりとやっていきたい」と列がなくなるまで、30分近くペンを走らせたこともあった。
再昇格を目指して努力を怠ることをしなかった清田は、二軍戦で20試合に出場して、打率.328、5本塁打、14打点と結果を残し、8月19日に再昇格を果たした。
再昇格後に2度、頭部に死球
再昇格後、初出場となった8月19日の西武戦から25日の日本ハム戦にかけて、6試合連続安打。調子をあげてきた矢先、不運に見舞われる。9月8日の西武戦で郭俊麟から頭部に死球を受けて、登録抹消。再び一軍に戻ってくると、9月21日の楽天戦で美馬学から頭部に死球。同じ月に2度も頭部に死球が当たる事態が起こった。
それでも、10月4日の楽天戦では、死球を受けた9月21日の試合以来の対戦となった美馬から2打席連続ヒットを記録。伊東勤監督は試合後、「同じ投手から2本ヒットを打てたのは収穫」と話した。
一夜明け、5日の試合前には、清田がフリー打撃の順番を待っているところに楽天・美馬が挨拶しにやってきた。申し訳なさそうに挨拶に来た美馬に対して、清田は時折、笑みを見せながら話しあっている姿は印象的だった。練習後、清田にどんな話をしていたのか聞いてみると、「(美馬が清田に)投げにくかったと言っていたので、投げにくいわりには、変化球とか投げてきた(笑)」という話をしたという。
また清田は「勝負の世界なので仕方がない。当てたくて当てたわけじゃない。あの時、美馬もすごく調子がよかったので、悔しかったと思う」と美馬をフォローすることも忘れなかった。
今季は打撃の状態があがらず二軍落ちを経験し、再昇格後も頭部に2度も死球が当たるなど、不本意な1年に終わった。「自分ではこうやれば打てるのにと思いながら打席に入れるんですけど、打席ではできない。練習ではできても、試合になるとまた普通に戻る。色んなことを試しても全然上手くいかず、勉強になった1年でした」。来季は、今年の試行錯誤が無駄ではなかったことを証明できるような活躍に期待したいところだ。
▼ 清田育宏
生年月日:86年2月11日
ポジション:外野手
背番号:1
身長/体重:180センチ/85キロ
投/打:右/右
今季成績:106試 率.225 本 6 点38
通算成績:557試 率.270 本36 点205
文=岩下雄太