どら増田のオリ熱魂!第11回・金子千尋
オリックスのエース金子千尋が、7月28日の楽天戦(ほっと神戸)で8勝目を挙げた。
8連敗中だったチームにとって後半戦の初白星となったが、降板後の金子は珍しく「なんとか7回は投げきりたかったです」と短いコメントを残した。6回0/3被安打8失点5という内容に納得していないのは言うまでもない。
7月29日に登録抹消となったが、今回の勝利により3年ぶりの二ケタ勝利も見えてきた。ファームでリフレッシュし、月間MVPを受賞した4月のような輝きを取り戻してもらいたい。そんな期待を込めながら、普段はあまり見ることが出来ない金子の魅力に迫ってみた。
ファンとの“つながり”
ファンのSNSなどを見ていると、金子のファッションについて知りたいという声を目にするが、その点を本人に尋ねると「ファッションやヘアスタイルへのこだわりは特にないけど…影響を受けているのはK-POPです」という答えが返ってきた。
「K-POPの中ではYGファミリー(BIGBANG、iKONなどが所属)が好きで、iKONはCSのテレビ局で練習生の頃から追ってる番組があって、それから追うようになりました。好きなメンバーはリーダーのハンビン(B.I)。曲も作ってるし、表現力の高さもある。プロ野球選手にも通じるところがありますね」
自身の登場曲(iKONの『Dumb&Dumber』)に使用していることや、ライブに行くと本人が公言していることから、金子のK-POP好きはファンにも知られているが、そこから受けた影響は大きい。
2015年には大阪で初のファンミーティングを開催。構成や選曲、そして曲を出すタイミングの指示など、金子のファンミーティングへの思いや、こだわりにはスタッフも感銘を受けていた。そんな金子の思いがファンにも伝わったのだろう。会場は終始笑顔に包まれ大成功に終わっている。
「ファンミーティングもK-POPからヒントを得てやらせてもらったんですけど、プロ野球選手がファンミーティングをやるのは難しいですね。彼らと違って歌はないわけですし、何をすればファンの皆さんが喜んでくれるのかというのを凄く考えました」
「今のオリックスのファンは、もともとのファンもいるけど、入れ替わっている感じも受けます。僕は、ファンサービスは平等にやりたいんですよ。それを球場でやるのはなかなか難しいじゃないですか。オフにファンミーティングをやろうと思ったのは、そんな思いもありました」
ファンミーティングに関してはまだやってみたいことがあるという。それは東京での開催だ。
「今年は(交流戦で)東京ドームと横浜スタジアムに行きましたけど、関東のファンもかなりいるじゃないですか。大阪だけじゃなく、東京でもファンミーティングをやりたい思いはありますね」
普段はオンとオフをしっかり分けているという金子だが、ファンに好評なSNSでの発信も「普段見られないことを発信することで、少しでもファンの皆さんが喜んでもらえたら」という思いで行っている。一方で「見ている人が不快にならないように」という配慮もなされている。こうしたマメで繊細な部分は、ピッチングをしている姿と何も変わらない。
仲間との“つながり”
昨年のシーズン中、ヤクルトにトレードされた同級生の近藤一樹とは絆が深く、京セラドームで行われたヤクルトとの交流戦では2人が談笑する姿も見られた。その近藤については「トレードで行ったというのは必要とされていること」と語り、「今年の活躍は刺激になっている」と話していた。
球団統合元年から一緒に頑張ってきたこともあり寂しさはあるようだが、今季の近藤はヤクルトの中継ぎとして31試合(8/1現在)に登板するなど、重要な戦力になっている。そんな近藤の話をする金子の表情はとても嬉しそうだった。
オリックスのエースとして常に1点も与えられない、絶対に勝たなきゃいけないという気持ちで投げている金子にとって、ホッできるのは「勝った瞬間」と「完封したとき」だという。
今季の自身の状態については、「昨年よりは良いですが、カウントを取れるボールでしっかりカウントを取りたい」と分析。2014年オフに行った“ネズミ”の除去手術の影響は「昨年も全くなかった」と語り、体調面に問題はないことを強調した。
「オリックス・バファローズ1期生として、チームを引っ張って行くので、ファンの皆さんには背中を蹴るくらいの勢いで、背中を押してほしい」
近藤の移籍により、球団統合元年から現役なのは金子一人になってしまった。1期生としての誇りが強い金子には、3年振りの二ケタ勝利はもとより、チームを鼓舞するようなピッチングを見せてもらいたい。そのためにファンは、背中を「蹴るくらい」の勢いある声援で、金子やチームを後押しするしかない。
取材・文=どら増田