どら増田のオリ熱魂!第21回・宗佑磨&岡崎大輔
安達了一の体調が芳しくないこともあり、シーズン終盤に高卒3年目の宗佑磨と、今年ドラフト3位の高卒ルーキー岡崎大輔という2人の内野手が一軍に昇格した。
「実は宗さんと、『俺らで1軍の二遊間を守りたいですね』という話をしたんです。でもそれまでに何年かかるんだろうなって話にもなって、まさか今年中に2人が同じ時期に1軍に上がれるとは思ってなかったので、一緒に守ることは出来なかったですけど、ビックリしましたし嬉しいですね。ここから切磋琢磨しながら2人で(ポジションを)掴みたいです」
花咲徳栄高校時代はキャプテンを務めていたこともあり、岡崎のコメントは高卒ルーキーとは思えないほど落ち着いている。
昨年まで編成部長を務めていた加藤康幸氏は、岡崎について「宗との二遊間で切磋琢磨すれば、2018年~19年までには出てくる選手。花咲徳栄ではキャプテンだったので、将来チームを引っ張る存在になれる可能性を秘めている」と語り、「打者としては左中間、右中間と扇の間に打てる能力があるので、二塁打が打てるバッター。宗が“剛”なら、岡崎は“柔”という感じ。しなやかさがあるんですよ」と評価していた。
「オリックスを若い力が上げていく」
宗は岡崎の2年先輩ながら、岡崎を最高のライバルであり、盟友だと思っている。その思いは岡崎も同じだ。
「岡崎には、将来は俺とお前で絶対に二遊間を組むぞという話をしました。ただ、岡崎と比べても今の僕には守備力が足りない。だからフェニックスリーグでは岡崎がショートで、僕がファーストや外野を守ることもありました。下からの突き上げを食らっている状況ですが、負けたくない。そうやって切磋琢磨しながらお互い成長できれば1番いいかなと思っています。なので、自分のためにもフェニックスリーグや秋のキャンプで徹底して守備の練習をしようと考えています。お互いに足りないところを全力で潰し、良さを伸ばしていくことでオリックスを若い力が上げていく、というのが野望ですかね」
岡崎はこの1年間を「あっという間だった」と言い、「春季キャンプで手首を痛めて、バットが振れないのに1軍で代走に使われてから始まったんですけど、成長できた1年でした」と振り返る。
そしてシーズン最終戦の試合後には、「最後に使ってくれた福良監督には感謝したいですし、課題も見つかったので、フェニックスリーグから来年の春季キャンプまでは、今までの意識を変えて、1軍でも活躍できる選手になりたいです」と力を込めて語っていた。
フェニックスリーグから秋季キャンプ、そして台湾で開催するウインターリーグのメンバーに、宗と岡崎は揃って選出された。この全てに風岡尚幸・内野守備走塁コーチが帯同し、目を光らせている。フェニックスリーグでは宗と同じく岡崎もファーストで起用されたことがあり、そういった采配からは、2人の闘争心に火をつける狙いがうかがえる。
バッティング面では昨年までソフトバンクの2軍コーチを務めていた藤井康雄打撃コーチの指導がとてもわかりやすいという。宗や岡崎を反対側のベンチから見ていただけに、その時に感じていたことを交えながら、的確なアドバイスを受けているそうだ。
新たな二遊間を
オリックスの今季の内野事情はベテランの小谷野栄一が130試合に出場したのが最多。最終戦の試合後に小谷野は若手選手の奮起を促していたが、正遊撃手である安達のバックアップ要員は必要だ。
今季は西野真弘がセカンドとサード、大城滉二がショートとセカンドを守る機会が多かったが、来季はドラフト3位で今年の都市対抗野球のMVP、NTT東日本でショートを守っていた福田周平を指名している。このメンバーに宗と岡崎が割り込むことができるか。
「今2軍で必死こいて練習している奴らと一軍で勝てたら最高じゃないですか?今苦しい思いをしているからこそ結果が出た時の喜びは大きいと思うので、僕も岡崎に負けるつもりもありませんが、あいつと切磋琢磨しながら負けないように頑張って、必ず2人で二遊間のレギュラーを獲って“ザキムネ旋風”を起こします!」
最後に宗はこのように力強く話してくれた。岡崎という存在が宗を心身ともに強くし、吹っ切れるキッカケになったのは間違いない。
良きライバルとして
ところが7日、高知で行われている秋季キャンプの守備で、宗が左肩に痛みを感じ検査を受けた結果、左上腕骨骨頭の骨挫傷という診断を受けて帰阪。ウインターリーグの出場も流動的とのこと。プロに入ってから最も強い気持ちで臨んだオフシーズンだったことを考えると、この躓きはかなり堪えているはずだ。春季キャンプではパワーアップした姿を見せられるように、焦らずに前を向いて、まずは治療に専念すべきだろう。
宗と岡崎のライバルストーリーは始まったばかり。2人がともに『切磋琢磨』という言葉を使っているのも興味深い。
誰もが羨む潜在能力を秘めている宗と、頭が切れる岡崎。この“ザキムネ”コンビがレギュラーとして機能すれば、長年の課題となっていたセンターラインを構築することができる。もちろんクリアすべきことは多いし、先輩たちの壁も厚い。ただ、宗や岡崎の力強い言葉に希望を抱かずにはいられなかった。近い将来、“ザキムネ旋風”が巻き起こり、オリックスに新時代が訪れることを楽しみに待ちたい。
取材・文=どら増田