成績は保証されない…?
停滞気味だったメジャーリーグのストーブリーグに大きなニュースが飛び込んできた。
ドジャースからFAになっていたマニー・マチャドがパドレスと10年総額3億ドル(約332億円)で契約。これはFA選手としてはメジャー史上最高額となった。
メジャーでFA選手が総額2億ドル以上の契約を結ぶのは、今回のマチャドで9例目。このうちアレックス・ロドリゲスが2度の2億ドル超え契約を結んだことがあるため、人数としては8人目となる。内訳は投手が3人、野手は6例(5人)だ。
今回はマチャドと同じ野手に焦点を当て、総額2億ドルを超えた契約の前後3年のシーズン“平均成績”を洗い出してみた。
【MLB野手・FA契約額ランキング】
1位 10年総額3億ドル マニー・マチャド
(2019年/26歳/ドジャース→パドレス)
[契約前] 158試 率.283 本36 点99 盗8
[契約後] ???
2位 10年総額2億7500万ドル アレックス・ロドリゲス
(2008年/32歳/ヤンキース)
[契約前] 158試 率.309 本46 点136 盗20
[契約後] 133試 率.286 本32 点109 盗12
3位 10年総額2億5200万ドル アレックス・ロドリゲス
(2001年/25歳/マリナーズ→レンジャーズ)
[契約前] 146試 率.305 本42 点122 盗27
[契約後] 162試 率.305 本52 点132 盗15
4位タイ 10年総額2億4000万ドル アルバート・プホルス
(2012年/31歳/カージナルス→エンゼルス)
[契約前] 155試 率.313 本42 点117 盗13
[契約後] 137試 率.273 本25 点91 盗5
4位タイ 10年総額2億4000万ドル ロビンソン・カノ
(2014年/31歳/ヤンキース→マリナーズ)
[契約前] 160試 率.309 本29 点106 盗6
[契約後] 158試 率.299 本25 点88 盗4
6位 9年総額2億1400万ドル プリンス・フィルダー
(2012年/27歳/ブリュワーズ→タイガース)
[契約前] 162試 率.287 本39 点115 盗1
[契約後] 122試 率.290 本19 点77 盗1
FAで大型契約を結ぶということは、その直近数シーズンは安定して好成績を残していた証でもある。実際に契約前の3シーズンは、いずれも平均とは思えないMVP級の数字が並ぶ。
しかし、契約後3シーズンの数字に目を移してみると、やはり数字は軒並み低下傾向だ。明らかに成績を上げたのは3例目のアレックス・ロドリゲスくらいだろう。ロドリゲスが成績を伸ばした要因としては、当時まだ25歳という若さだったことに加え、投手有利とされる球場から打者有利とされる球場に本拠地を移したことも大きかった。
そのロドリゲスはヤンキースに移籍後の2007年オフに新たな10年契約を結びなおした。この時の年齢は32歳。脂も乗り切り、選手としては絶頂期だったが、大型契約後の2008年以降は徐々に成績を落としていった。
ロドリゲスの例を見るまでもなく、大金を得てそこからさらに数字を伸ばすことは簡単ではない。大型契約を結ぶことによってプレッシャーも増大し、ケガによる数試合の欠場でも批判の対象となってしまう。ここでは契約後3シーズンの成績を取り上げたが、年齢を重ねる4シーズン目以降はさらに成績を落としていることは明らかだ。
特に30歳を過ぎて大型契約を結んだプホルスやカノはすでに“不良債権”と化している。27歳で移籍したフィルダーも故障に泣き、タイガースでは2年プレーしただけでチームを去った。9年という契約を全うすることなく、大型契約後わずか5シーズンで引退している。
今回、FA選手としては初めて総額3億ドルの契約を結んだマチャド。年齢的にはまだまだ活躍が見込めるものの、精神面の未熟さを指摘する声もあって不安は少なくない。
数年後に振り返った時、今回の契約が不良債権と呼ばれていなければいいのだが……。
文=八木遊(やぎ・ゆう)