5位に低迷するヤクルトが打撃部門でトップ爆走中!
昨年、最下位に沈んだヤクルト。今季も開幕から1カ月が過ぎた5月29日現在、21勝29敗と大きく負け越しての5位と低迷している。投手陣の防御率は最下位争いをくり広げるDeNAを下回り、唯一の5点台となる5.03。規定投球回に達した投手の勝ち頭が3勝の古野正人。2勝の八木亮祐、石川雅規が続くも、安定した試合運びができない状況が見て取れる。
ところが、チームの打撃成績を見てみれば、誰もが驚くはずだ。
5月29日現在、打率(.291)、得点(275)、安打(525)、塁打(775)、打点(267)、長打率(.429)、出塁率(.356)と、7部門でリーグ1位。ついでにいうと、犠打(48)もトップである。個人成績に目を移せば、畠山和洋(.330/5位)、山田哲人(.323/8位)、川端慎吾(.316/9位)と、3人がベストテン入り。主砲・バレンティン(.301/11位)も続いている。
世代を牽引してきた逸材左腕 プロでの挫折を経て逆襲へ!
1984年生まれの雄平は、世代のトップを走る選手だった。中学時代は、神奈川県横浜市を拠点とする硬式クラブ・緑東シニア(現・青葉緑東シニア)に所属。楽天のルーキー・松井裕樹の出身チームであり、中学硬式球界の名門である。雄平は投打の柱として3年春の全国選抜大会準優勝。決勝で屈したのは、左右の逸材と並び称された泉正義(宇都宮学園高→ヤクルト→2005年オフ退団)がエースの瀬谷シニア(神奈川)だった。
全国の強豪校が争奪戦をくり広げた結果、選んだ進学先は東北高校(宮城)。甲子園出場は2年春のセンバツ(2回戦敗退)のみだが、150キロを超える剛腕サウスポーとして注目を集め続けた。投げない試合では外野を守り、クリーンアップを務めるチームの柱。打っても投げても走っても、パワフルでスピード感あふれる選手だった。なお、東北高の2学年下にいたのがダルビッシュ有(レンジャーズ)。雄平の野球に取り組む姿勢は、大阪から進学してきた1年生のダルビッシュに大きな影響を与えたという。
2002年秋のドラフト1巡目でヤクルトに入団。「松坂世代」の大学生が大量にプロ入りした年で、高校卒の1巡目指名選手は他に、尾崎匡哉(報徳学園高→日本ハム)、西岡剛(大阪桐蔭高→ロッテ)、森岡良介(明徳義塾高→中日)、坂口智隆(神戸国際大付属高→近鉄)。投手は雄平だけだった。
しかし、投手としては、1年目にあげた5勝が最高成績。フォーム改造など試行錯誤も実らず、2010年、打撃センスを生かすべく野手転向を決意した。
2011年は登録名を「雄平」として、イースタン打率トップの.330をマーク。ついにブレイクかという2013年、5月に右ヒザ靱帯損傷で手術という不運に見舞われるも、今季は2番・センターとして開幕スタメン。4月に入って間もなく、バレンティンの後を打つ5番に定着した。5月29日現在、48試合に出場し、179打数53安打28打点、10本塁打。18四球、5盗塁も光っている。
同じ1984年生まれの投手には、岸孝之(西武)、吉見一起(中日)らがいる。投手として彼らに並ぶことは、もうないだろう。しかし、野手として先を走る同級生、西岡(現・阪神)、坂口(現・オリックス)、長野久義(巨人)らに追い付き、追い越すことはできるはずだ。
世代のトップを走っていた逸材の逆襲。遅咲きの外野手のブレイクの裏には、そんなドラマが潜んでいる。
文・平田美穂(ひらた・みほ)