10年目のキャリアハイ
196センチの体躯を誇るハマの大型右腕には、“ロマン”を感じずにはいられない。プロ入り10年目を迎えた国吉佑樹は今季、誰もが一目置いていた高いポテンシャルを発揮し、キャリアハイの成績を残した。
中継ぎとして自己最多の53試合に登板。回跨ぎのロングリリーフも多々経験し、投球回数は69.1イニングを数えた。昨年までブルペン陣を支えた砂田毅樹、三上朋也、スペンサー・パットンの穴を埋める働きで、5勝3敗、9ホールドをマーク。また4月6日には、大谷翔平に次ぐ日本人歴代2位の161キロが計測されるなど、注目度も一気に高まった1年だった。
「1年間戦い抜けたことは自信になりました」
今シーズンは開幕前に「1年間一軍で活躍すること」を目標に掲げていが、見事に有言実行。その陰には、昨年オフに経験したオーストラリアンベースボールでの武者修行が大きく寄与したと自己分析する。
国吉いわく「5カ月トレーニングをして一回り大きくなった」「ストレートが武器と改めて気づいた」ことで、「力を入れてストレートで押していく、自分の理想に近づくこと」ができたという。
さらには、外国人選手とのプレーを通じて「野球を楽しむこと」を思い出し、結果が良くても悪くても「一喜一憂しない」メンタリティを手にすることができた。その結果、シーズンを通じて「うまく感情を切り替え、同じ気持ち、フラットな状態」でマウンドに向かえたことも、好結果の要因になったと振り返る。
来季へ向けたブラッシュアップ
一軍でプレーし続けたことについては、「CSでも使ってもらえたし、シーズンを通して信頼してもらえたかな」と一定の満足感を示しながらも、「今年をベースに使ってもらえるように、来季も評価を落とさないように結果を出さないと。一軍を前提としてオフも取り組む」と慢心はない。
具体的には、交流戦から使い始めた「高速カットの精度を上げ、ファール、空振り、ゴロと、様々な形で打ち取れるようにしたい」と語り、「カーブやチェンジアップで、バッターに前後の距離感を意識させて、投球の幅を広げていきたい」と新球にも挑戦する考えを明かした。
ベースとなるストレートに関しても「コンスタントに150キロ後半を出したい。エスコバーのように」と、目標を設定。コンディション面は「45試合前後、60イニングあたりで勢いが出なくなった。感覚は同じでも見えない疲れが出て、9月はよくなかった」と感じており、同じ轍を踏まないように鍛錬を重ねる覚悟も口にした。
「まだあと10年は」
ベイスターズが日本シリーズを戦った2017年、国吉はその試合をテレビで観戦していた。その際、「(子どもと)テレビを一緒に見るお父さんではなく、テレビの中にいるお父さんでいたい」と誓っていた。
今年は、CSのマウンドにも上がったことで“誓い”を「クリアできた」と相好を崩したが、「まだ下の子は小さいので、野球がちゃんとわかる年まで選手でありたい。あと10年はやりたい」と、今度は息の長い活躍を誓う。
今季は4月6日と6月29日の2回、「中継ぎなのでもう立てないと思っていた」お立ち台にも上がり、「とても嬉しかった」と、久々の感覚を思い出した。来季からは、背番号も慣れ親しんだ「65」から「92」に変わる。「名前にちなんだのと、今年10年目が終わった節目でもあり、いいキッカケにしたいという思い」からの変更だ。
今年のブレイクに満足するのではなく、新たな番号を背負って11年目のシーズンへ邁進する国吉佑樹。未完の大器と称された右腕は、まだまだ進化の途上にある。
取材・文=萩原孝弘(はぎわら・たかひろ)