コラム 2014.06.08. 11:16

広島ゴールデンルーキーの系譜 俺たちの時代を語りつくそう プロ野球80~90年代

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[写真]Getty Images
大瀬良大地,


1年だけ神がかりな活躍 広島カープゴールデンルーキー投手


 今年の広島カープは、九里亜蓮と大瀬良大地の新人右腕が先発ローテーションに入って活躍。チームの大躍進の一翼を担っている。元来、広島の新人投手は即戦力として活躍する傾向にある。特に80年代~90年代は新人王の宝庫だった。当時、ファンを熱狂させたルーキーたちをランキングで紹介しよう。


広島,



新人王は先発で受賞した津田 史上初の四つどもえとなった小林


 1位は「炎のストッパー」として、若くしてその命を散らした津田恒実。リリーフエースとしてその存在は神格化されているが、ルーキーイヤーの82年は先発として活躍した。この年11勝(6敗)を挙げ、新人王を獲得した事実は徐々に風化されつつあるので、今一度、再認識の意味を込めて1位とした。

 新人時代はリリーフエースのときのような鬼気迫る雰囲気はまだなかったが、一球投げるごとに躍動するところなど、当時からその片鱗は見せていた。

 そして、2位は小林幹英。98年の開幕戦でリリーフ登板し勝利投手になると、その後も抑えで活躍。左足を上げて一度静止してから「バッ」とグラブを本塁方向に勢い良く差し出して投げる速球は実に気持ちが入っていた。この年は、川上憲伸(中日)、高橋由伸(巨人)、坪井智哉(阪神)との「四つどもえ」の新人王争いとなり、新人王は川上が受賞したが、小林も54試合に登板し9勝6敗18セーブの好成績を挙げ、他の2人とともに特別表彰された。

 抑えといっても、現代でいうとセットアッパーとクローザーを兼務した大車輪の働きであり、2年目以降は故障もあって中継ぎに転じたものの、その熱投ぶりを支持するファンは多かった。

 3位は山内泰幸。ルーキーイヤーの95年から本格派右腕として活躍し、いきなり14勝10敗の好成績。新人王を獲得した。

 左足を上げた際に右肘も高く上がる独特のフォームが話題になり、「UFO投法」と呼ばれていたが、それがウィキペディアに掲載されているような“ピンク・レディーの楽曲『UFO』の振り付けに似ていたことから”であったことを、当時のファンがどれだけ認識していたかはやや疑問? 筆者の周辺では「なんで『UFO投法』なの?」と物議をかもしたことが何度もあった。

 この他にも、長冨浩志(86年新人王)、川端順(2年目の85年新人王)、澤﨑俊和(97年新人王)など、80年代~90年代に広島で新人時代にいきなり活躍した投手は多い。この流れは2000年代に入っても、永川勝浩や青木高広(現巨人)、野村祐輔などに引き継がれ、広島の伝統的な特徴のひとつとなっている。

 ただ、大変残念なのは、ほとんどの投手が初年度の活躍がベストキャリアとなってしまっていること。2年目以降は故障などにより思うような活躍ができないまま引退しているのも、ひとつの傾向になってしまっている。

 球団の財政状況から大型補強ができない広島にとって、新人の活躍はチームを勢いづける唯一の手段であったことから、どの投手もいきなり主戦としてフル回転で起用され、その年限りで力尽きていったのだ。だがそんな中にあっても、皆必死に復調を目指し、その後、立場や役割を変えてチームに貢献した痕跡を残しているのが嬉しい。きっと、その姿がファンの胸を打ち、彼らのことを末永く語り継いでいるのだと思う。

 今年の大瀬良、九里についてはどうなるか? 過去の流れを引き継ぐのは新人イヤーまでとし、来年以降も活躍することを今から祈っている。


【80年代~90年代に台頭した広島ゴールデンルーキ投手ランキング】

1位 津田恒実  通算49勝41敗90セーブ
2位 小林幹英  通算19勝22敗29セーブ
3位 山内泰幸  通算45勝44敗1セーブ 



文・キビタキビオ(きびた・きびお)

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